3行でわかるこの記事

  • 何が起きた? 2月8日の衆院選で高市政権が圧勝し、暗号資産の税制改正が一気に現実味を帯びてきました
  • 重要なポイント これまで最大55%だった暗号資産の税率が、株と同じ約20%に引き下げられる見通しです
  • なぜ注目? 税金が変われば「日本でWeb3をやる意味」が大きく変わります。私たちの資産形成にも直結する話です

はじめに

「暗号資産って儲かっても、税金で半分以上持っていかれるんでしょ?」

そんな話を聞いたことがある方は多いかもしれません。実はこれ、大げさではなく本当の話でした。日本では、暗号資産の利益には最大で約55%もの税金がかかる仕組みだったのです。

ところが2月8日に行われた衆議院選挙をきっかけに、この状況が大きく動き出しました。

この記事では、こんなことを解説していきます。

  • なぜ日本の暗号資産の税金は高かったのか
  • 衆院選の結果が税制にどう影響するのか
  • 新しい税制で何がどう変わるのか
  • 私たちの暮らしや投資にどんな意味があるのか

難しい税金の話を、できるだけわかりやすくお伝えしますね。


そもそも、なぜ暗号資産の税金は高かったの?

日本では、暗号資産で得た利益は「雑所得」というカテゴリーに分類されてきました。

雑所得は、給料や他の収入と合算して税率が決まる「総合課税」の対象です。収入が多ければ多いほど税率が上がる仕組みなので、暗号資産で大きな利益が出ると税率はどんどん上がり、住民税と合わせて最大で約55%に達します。

一方、株式投資の利益はどうでしょう。株の場合は「申告分離課税」という別の仕組みが使われていて、どれだけ利益が出ても税率は一律で約20%です。

同じ「投資で得た利益」なのに、暗号資産だけ税率が2倍以上。この不公平感が、長年にわたって業界から問題視されてきました。そしてこの重い税負担が原因で、一部の投資家や起業家が税率の低いシンガポールやドバイへ拠点を移す「頭脳流出」も起きていたのです。


衆院選の結果で何が変わった?

2月8日の第51回衆議院選挙で、高市早苗首相が率いる自民党は歴史的な圧勝を収めました。単独で絶対安定多数を確保し、連立与党では衆議院の3分の2に迫る議席を獲得しています。

この結果がWeb3業界にとって大きな意味を持つのは、選挙の直前に「令和8年度税制改正大綱」が公表されていたからです。税制改正大綱とは、翌年度の税制をどう変えるかの方針を示す文書。ここに暗号資産の分離課税化が盛り込まれていました。

選挙で大勝したことで、この税制改正を国会で通す政治的な力が確保されたわけです。

さらに注目すべきは、与党だけでなく野党も暗号資産に前向きな姿勢を見せていること。日本維新の会はWeb3特区構想を掲げ、国民民主党は暗号資産減税を公約に含めていました。与野党を超えた合意が形成されているため、国会審議でこの改正がひっくり返る可能性は低いとみられています。


新しい税制、具体的にどう変わる?

令和8年度の税制改正大綱に盛り込まれた内容を、ポイントを絞って見ていきましょう。

① 税率が一律約20%に

暗号資産の利益に「申告分離課税」が導入されます。税率は所得税15%+住民税5%=合計約20%(復興特別所得税を含めると20.315%)。株やFXと同じ水準です。

② 損した年の分を翌年に繰り越せる

暗号資産で損失が出た場合、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越せるようになります。

たとえば今年100万円の損失を出し、来年200万円の利益が出た場合。これまでは来年の200万円全額に税金がかかっていましたが、改正後は前年の損失100万円を差し引いた100万円にだけ税金がかかります。値動きの激しい暗号資産では、この「損失繰越」はとても心強い制度です。

ただし注意点もあります。損失を繰り越すには、利益がゼロの年でも毎年確定申告が必要です。申告を1年でも飛ばすと、繰り越しの権利が消えてしまいます。

③ 対象は「特定暗号資産」に限定

分離課税の対象となるのは、国内の登録取引所で扱われる「特定暗号資産」に限定される見通しです。海外取引所やDEX(分散型取引所)で取引した暗号資産は、引き続き総合課税(最大55%)が適用される可能性が高いとされています。

つまり、ビットコインやイーサリアムなど国内取引所で買える主要銘柄は恩恵を受けやすい一方、マイナーなトークンを海外で取引する場合は注意が必要です。

④ 取引業者から税務署へ報告が義務化

取引所は利用者の氏名・住所・マイナンバー・取引内容を税務署に報告することが義務づけられます。税務署側も取引を正確に把握できるようになるため、きちんと申告する人にとっては安心材料ですが、申告漏れはこれまで以上に発覚しやすくなります。


世界の中の日本 — なぜ急ぐのか

日本がこれほど急ピッチで税制改革を進める背景には、世界的な競争があります。

アメリカではトランプ政権が「暗号資産の首都(Crypto Capital)」を掲げ、規制緩和を推し進めています。シンガポール、ドバイ、香港なども、暗号資産フレンドリーな制度で人材とマネーを呼び込む政策をとっています。

一方、日本は技術力では世界に引けを取らないのに、税制の重さがボトルネックになっていました。今回の改正は、日本が国際競争の場に再び立つための「チケット」とも言えます。

逆に中国は2月に入ってステーブルコインやRWA(現実資産のトークン化)まで規制対象に加える強化策を発表しています。各国の姿勢がはっきり分かれてきた今、日本がどちら側に立つのかが問われているのです。


施行はいつ?まだわからないことも

改正は、早ければ2028年からの適用が見込まれています。ただし、現時点で明らかになっていないことも多くあります。

  • 施行の正確なタイミング
  • 改正前から保有していた暗号資産の含み益の扱い
  • ステーキング(暗号資産を預けて報酬を得る仕組み)の税務上の扱い

これらは今後の法整備の中で詳細が決まっていきます。引き続き注目していきましょう。


用語ミニ解説

  • 申告分離課税: 給料などの収入とは切り離して、投資の利益だけ別に税金を計算する仕組み。(家計簿を「生活費」と「投資」で完全に分けて管理するイメージ)
  • 総合課税: すべての収入を合算して税率を決める仕組み。収入が多いほど税率が上がる。(全部まとめてひとつの箱に入れるイメージ)
  • 損失繰越控除: 投資で損した金額を翌年以降に持ち越して、将来の利益から差し引ける制度。(今年のマイナスを「借り」として記録しておけるイメージ)
  • 税制改正大綱: 与党がまとめる「来年度の税金をこう変えます」という方針書。これをもとに法案が作られる
  • RWA(Real World Assets): 不動産や国債など、現実世界の資産をブロックチェーン上でトークンとして扱うこと

Me-Moon編集後記 🌙

「暗号資産の税金が高すぎる」。この声は何年も前から上がっていましたが、ついに大きな転換点を迎えようとしています。

税率が下がることは、単に「お得になる」という話ではありません。暗号資産が株式と同じように正式な金融商品として認められるということでもあります。それは日本のWeb3の未来にとって、とても大きな一歩です。

もちろん、実際の施行はまだ先ですし、対象が限定されるなど注意すべき点もあります。焦らず、正確な情報をキャッチしながら備えていきたいですね。

Me-Moonでは、こうした「私たちの生活に関わるWeb3の動き」をこれからもわかりやすくお届けしていきます。

一緒に、新しい時代を楽しんでいきましょう🌙


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