3行でわかるこの記事
- 何が起きた? 5年連続で減少していた有線イヤホン・ヘッドホンの売上が、2025年後半から増加に転じています
- 重要なポイント セレブのレトロ志向・Bluetoothへの不満・関税による価格高騰という3つの要因が重なっています
- なぜ注目? iPhone 7がヘッドホンジャックを廃止してから約10年、「有線回帰」が静かに始まっています
はじめに
「ワイヤレスで音楽聴くなんて当たり前でしょ?」
そう思う方が多いかもしれません。でも今、ちょっと面白いことが起きています。市場調査会社Circanaのデータによると、5年連続で売上が減り続けていた有線イヤホン・ヘッドホンが、2025年に3%増(約$15M)でプラスに転じました。特に2025年下半期(7〜12月)は前年比+10%で急加速し、2026年に入ってからの6週間だけで売上が+20%に達しています。
この記事では、こんなことを解説します。
- なぜ「有線回帰」が起きているの?
- セレブと音楽ファンに何が起きているの?
- ワイヤレスと有線、結局どちらを選ぶべき?
ひとことで言うと
有線イヤホンの復調は、Bluetoothへの不満蓄積・セレブのレトロ志向・価格高騰という3つの流れが重なった結果です。ここからは、その背景と仕組みを順番に見ていきましょう。
理由1:ワイヤレスの「見えないストレス」が積み重なっていた
ワイヤレスイヤホンには便利な面がある一方で、地味なストレスがあります。
- バッテリーが切れると使えなくなる
- ポケットやカバンの中で片方だけ見当たらなくなる
- 人混みの中でBluetooth接続が不安定になる
- ペアリングのやり直しが面倒
これらは一つひとつは小さな不満でも、毎日使っていると蓄積されます。有線なら電池切れもなく、挿せばすぐ使える。その「シンプルさ」が見直されているのが、有線回帰の一つ目の理由です。
理由2:セレブとZ世代の「あえて有線」スタイル
2021年頃から、欧米の著名人がスマートフォンに有線イヤホンをつなぐ姿がパパラッチ写真や自撮りに登場し始めました。ベラ・ハディッド、アリアナ・グランデ、チャーリー・XCX、リリー・ローズ・デップ——いずれも若い世代に影響力を持つ人物たちです。
これは偶然ではなく、2000年代〜2010年代初頭の「iPod時代」のビジュアルをあえて再現するレトロ志向の表れです。ワイヤレスが「当たり前すぎる」と感じた若い世代が、有線を「あえて使うもの」として選ぶようになっている。ファッションでヴィンテージが人気になる感覚と似ています。
理由3:関税と物価高が価格逆転を起こした
もう一つの現実的な理由が、価格です。
2025〜2026年にかけて関税の影響でワイヤレスイヤホンの価格が上昇しました。一方、有線イヤホンは構造がシンプルなため価格が抑えやすく、同じ予算なら有線のほうが音質のよい製品を選べるケースが増えています。
音響メディアSoundGuysの編集長クリス・トーマス氏は「同じ価格帯では、有線のほうが音質面で優れている傾向がある」と指摘しています。音楽を本気で楽しみたい人ほど、この差は無視できません。
ワイヤレスと有線、どう選ぶ?
有線が「すべての面で勝る」わけではありません。用途によって使い分けるのが現実的です。
| 場面 | 向いているイヤホン |
|---|---|
| 通勤・移動中 | ワイヤレス(ケーブルが引っかかりにくい) |
| デスクワーク・自宅での音楽鑑賞 | 有線(音質・安定性) |
| 運動・スポーツ | ワイヤレス(汗への対応) |
| 長時間の使用(バッテリー切れが心配) | 有線 |
ワイヤレスの利便性を知ったからこそ、有線の良さが再発見される。今起きているのは、そういう循環かもしれません。
なお、本サイトでも以前にワイヤレスイヤホンの最前線としてNothing Headphone (a)をレビューしています。135時間バッテリーという驚異の性能を誇る製品ですが、それでも「有線に戻りたい」という感覚は消えないという声があるのも事実です。
用語ミニ解説
- Circana: 米国の市場調査会社。家電・エンタメ・食品などの小売データを専門に分析し、業界トレンドの把握に使われます。
- Bluetooth: スマートフォンやパソコンと周辺機器を無線で接続する通信規格。数メートル以内で使える短距離無線通信の代表格です。
- ヘッドホンジャック(3.5mm端子): イヤホンをスマートフォンに有線で接続するための穴。2016年のiPhone 7を皮切りに廃止するスマートフォンが増えました。
- コーデック: Bluetoothイヤホンで音楽データを送受信する際の変換方式。AACやLDACなど種類があり、コーデックによって音質が変わります。
Me-Moon編集後記 🌙
「新しいものがいつも勝つ」とは限らないのが、テクノロジーの面白さだと思います。
ワイヤレスが普及して、有線が不便に見えた時期があった。でも今、「挿すだけで繋がる」「電池切れなし」「同じ予算でより良い音」という有線の当たり前の価値が、改めて輝いて見えている。
iPhone 7がヘッドホンジャックを廃止してから約10年。「廃止」されたはずのものが静かに戻ってくる。技術が進化しても、人間の「シンプルに使いたい」という感覚は変わらないのかもしれませんね🌙
参考リンク
- Bluetoothより有線イヤホンがトレンド?2025年後半から売上増加中 — Gadget Gate (Phile Web), 2026年3月27日
- Wired headphones are making a comeback: Here’s why — SoundGuys, 2026年
- Wired Headphones Comeback: Early 2000s Nostalgia Drives Growth — Circana, 2026年
