3行でわかるこの記事
- 何が起きた? 世界的な決済大手Mastercard(マスターカード)が、バイナンスやサークル、リップルなど85社以上の暗号資産関連企業・金融機関が参加する「クリプト・パートナー・プログラム」を2026年3月13日に正式発表しました
- 重要なポイント クロスボーダー送金やB2B決済、グローバルな資金移動のインフラ整備を、暗号資産業界と従来の金融業界が「一緒に」進めていきます
- なぜ注目? 暗号資産が「投機の対象」から「社会を支えるインフラ」へと変わりつつある——その象徴的な出来事だからです
はじめに
33兆ドル——2025年1年間に、世界中で送金されたステーブルコインの総額です。前年の約1.7倍という驚異的な成長率。
「暗号資産って、値段が上がったり下がったりするギャンブルみたいなものでしょ?」
たしかに数年前までは、そういうイメージが強かったかもしれません。でも2026年3月13日に発表されたMastercardの動きは、暗号資産の「立ち位置」が根本的に変わりつつあることを示しています。
あのMastercardが、バイナンスやリップルといった暗号資産のトップ企業を含む85社以上と手を組み、暗号資産を日常の決済インフラに組み込もうとしているのです。
この記事では、次の3つの疑問を解説していきます。
- Mastercardの「クリプト・パートナー・プログラム」って何?
- なぜ今、クレジットカード会社が暗号資産に本気なの?
- 私たちの「お金の使い方」はどう変わるの?
ひとことで言うと
Mastercardが暗号資産業界の主要85社超と正式なパートナーシップを組み、暗号資産を使ったクロスボーダー送金や決済のインフラを本格的に整備し始めました。暗号資産は「投機」から「インフラ」へ——その転換点が来ています。
Mastercardの「クリプト・パートナー・プログラム」の正体
参加企業の顔ぶれがすごい
今回のプログラムに名を連ねている企業は、暗号資産業界のオールスターと言っても過言ではありません。
- バイナンス(Binance): 世界最大級の暗号資産取引所
- サークル(Circle): ドルと連動するステーブルコイン「USDC」の発行元
- リップル(Ripple): 国際送金に特化したブロックチェーン技術を持つ企業
- ジェミナイ(Gemini): 米国で高い信頼性を持つ暗号資産取引所
- ペイパル(PayPal): グローバルなオンライン決済の巨人
このほかにも金融機関やフィンテック企業が多数参加し、合計85社以上にのぼります。
何を目指しているの?
このプログラムの核心は、暗号資産を使った「お金の移動」を、もっとスムーズに、もっと安全に、もっと身近にすることです。
具体的には、以下の分野での協力が進められます。
- クロスボーダー送金: 国境を越えたお金の移動を速く・安くする
- B2B決済: 企業間の取引をブロックチェーンで効率化する
- ステーブルコイン決済: 価格が安定したデジタル通貨での日常決済を普及させる
たとえるなら、これまでバラバラに走っていた「暗号資産の電車」と「クレジットカードの電車」が、同じ線路の上を走れるように、レールを統一する工事が始まった——そんなイメージです。
なぜ今、クレジットカード会社が暗号資産に本気なのか
「Mastercardがここまで暗号資産に力を入れるのはなぜ?」と不思議に思うかもしれません。その答えは、ステーブルコインの爆発的な成長にあります。
ステーブルコインの送金額が「33兆ドル」に
調査会社Artemis Analyticsのデータによると、2025年の世界のステーブルコイン送金総額は前年比72%増の約33兆ドル(日本円で約5,000兆円相当)に達しました。
ステーブルコインとは、ドルや円などの法定通貨に価値を連動させた暗号資産のこと。ビットコインのように価格が激しく上下しないため、「決済に使えるデジタル通貨」として急速に普及しています。
先日のMe-Moon記事でご紹介したソニー銀行×JPYCの提携も、ステーブルコインが身近になりつつある一例です。
USDCがテザーを逆転
さらに注目すべきは、ステーブルコイン市場の勢力図にも変化が起きていること。サークルが発行するUSDCの2026年累計取引量が約2.2兆ドルに達し、長年首位だったテザー(USDT)の約1.3兆ドルを上回りました。
USDCは透明性の高い監査体制を持ち、規制への準拠にも積極的なステーブルコイン。法人利用やクロスボーダー決済において、USDCが選ばれるケースが増えていることが影響しているとみられています。
Mastercardにとって、これだけの規模で動いているステーブルコイン経済を無視するわけにはいかない——そう考えるのは自然なことかもしれません。
「投機からインフラへ」——暗号資産の転換は本物か
サークルのCCO(最高商務責任者)であるカッシュ・ラザギ氏は、今回のプログラム発表にあたり、印象的なコメントを残しています。
暗号資産市場は「投機からインフラへ」移行しつつある
この一言は、暗号資産業界が経験してきた変化を端的に表しています。
2017〜2018年の「ICOバブル」、2021年の「NFTブーム」、そして2022年の「FTX破綻」——暗号資産は投機的な熱狂と暴落を繰り返してきました。しかし2025年以降、ステーブルコインの社会実装が進み、日銀のブロックチェーン決済実験(こちらの記事で解説)や、大手金融機関のデジタル証券発行が相次ぐなど、暗号資産の技術は社会インフラの一部として組み込まれ始めています。
Mastercardという「既存の金融システムの巨人」が85社と手を組んだことは、この転換が「一時的なトレンド」ではなく「不可逆的な流れ」であることを示唆しているのかもしれません。
私たちの暮らしへの影響は?
「Mastercardと暗号資産企業の提携って、自分に関係あるの?」と思った方もいるかもしれません。でも、じわじわと私たちの生活にも影響が出てくる可能性があります。
影響① 海外送金がもっと速く・安くなるかも
現在、海外にお金を送ると数日かかるうえに手数料が数千円かかることもあります。ステーブルコインとMastercardのネットワークが融合すれば、海外送金がほぼリアルタイムで、しかも低コストで完了する日が来るかもしれません。
影響② カードで暗号資産が使えるようになるかも
Mastercardが暗号資産企業と組むことで、将来的には「Mastercard対応のお店で、ステーブルコインで支払う」といった使い方が実現する可能性があります。
影響③ 日本のWeb3推進にも追い風
日本でも金融庁がブロックチェーンの活用ガイドラインを整備し、SBI VCトレードのTON・SUI上場やスクウェア・エニックスのTezosバリデーター参加など、大手企業の参入が続いています。グローバルな決済インフラの暗号資産対応が進めば、日本企業のWeb3活用もさらに加速するでしょう。
用語ミニ解説
- ステーブルコイン: ドルや円などの法定通貨に価値を連動させた暗号資産。ビットコインと違って価格が安定しているため、決済や送金に使いやすい(「デジタル版の外貨」のイメージ)
- クロスボーダー送金: 国境を越えてお金を送ること。従来は銀行を複数経由するため時間もコストもかかったが、ブロックチェーン技術で大幅に改善される可能性がある(「お金の国際宅配便」のイメージ)
- B2B決済: 企業間(Business to Business)のお金のやり取り。仕入れ代金や業務委託費の支払いなどが該当(「会社同士のお金の受け渡し」のイメージ)
- USDC(ユーエスディーシー): サークル社が発行する米ドル連動のステーブルコイン。定期的な監査を受けており、透明性の高さが特徴(「監査付きデジタルドル」のイメージ)
- クリプト: 「暗号資産」の英語表記「Cryptocurrency(クリプトカレンシー)」の略称。業界では「クリプト」と呼ぶのが一般的(「デジタル通貨全般を指す業界用語」のイメージ)
Me-Moon編集後記 🌙
Mastercardといえば、世界中のお店やATMで見かける、あの赤とオレンジの丸いロゴ。そのMastercardが85社もの暗号資産企業と手を組む——ほんの5年前なら「冗談でしょ?」と言われていたかもしれません。
でも、ステーブルコイン送金が年間33兆ドルに達し、USDCがテザーを逆転するような変化が起きている2026年の今、クレジットカード会社が暗号資産に「乗り出さない」ほうがむしろ不自然なのかもしれません。
「投機からインフラへ」——この言葉に、暗号資産を取り巻く景色が静かに、でも確実に変わり始めていることを感じます🌙
参考リンク
- バイナンス・リップル・ペイパルなど85社超が参加 マスターカードが仮想通貨パートナープログラムを始動 — CoinPost, 2026年3月12日
- Mastercard launches crypto partner programme with 85+ firms including Binance, Circle, Ripple — Mastercard, 2026年3月11日
