3行でわかるこの記事
- 何が起きた? ブロックチェーン分析企業チェイナリシスが「2026年暗号資産犯罪動向調査レポート」の日本語版を2026年3月16日に公開しました
- 重要なポイント 2025年に不正アドレスが受け取った暗号資産は少なくとも1,540億ドル(約24.5兆円)と過去最高、そのうち84%がステーブルコインでした
- なぜ注目? 北朝鮮ハッカーの窃取額が20億ドルを突破し、AI活用型の詐欺も急増するなど、暗号資産の安全を守るために知っておくべき情報が詰まっているからです
はじめに
1,540億ドル——日本円にして約24兆5,500億円。日本の防衛費のおよそ3年分に相当する金額です。
「暗号資産って、なんとなく怪しいイメージがある」と思っている方も少なくないかもしれません。でも実際にどのくらいの規模で犯罪が起きているのか、具体的な数字を見たことがある方は意外と少ないのではないでしょうか。
2026年3月16日、ブロックチェーン分析企業のチェイナリシスが公開した最新レポートには、暗号資産をめぐる犯罪の実態が克明に記されていました。
この記事では、次の3つの疑問に答えていきます。
- 暗号資産犯罪の「リアルな規模感」はどのくらい?
- 北朝鮮のハッカーやAIを使った詐欺はどれほど深刻なの?
- 日本国内の被害はどうなっている?
ひとことで言うと
暗号資産を狙った犯罪の被害総額が過去最高の1,540億ドルに達し、国家レベルのハッキングやAIを悪用した新型詐欺が急増しています。日本国内でも詐欺関連の送金が約1,219億円に上ると推計されており、私たちにとっても他人事ではありません。
そもそも「チェイナリシス」って何をしている会社?
レポートの話に入る前に、発表元であるチェイナリシス(Chainalysis)という会社について知っておきましょう。
チェイナリシスは、ブロックチェーン上のお金の流れを追跡・分析する世界最大級の企業です。70カ国以上の政府機関、金融機関、暗号資産取引所にデータ分析ツールを提供しています。
たとえるなら、「デジタル世界の探偵事務所」のような存在。犯罪に使われた暗号資産がどこからどこへ流れたのかを追跡し、各国の捜査機関に情報を提供しています。日本でも「チェイナリシス・ジャパン」が活動しており、警察庁をはじめとする関係機関と連携しています。
レポートが明かす「4つの衝撃」
衝撃① 被害総額1,540億ドル、前年比162%増
2025年に不正な活動に利用された暗号資産アドレスが受け取った資金は、少なくとも1,540億ドル(約24.5兆円)に達しました。前年比で162%増という急激な増加です。
さらに注目すべきは、この不正送金の84%をステーブルコインが占めていたこと。先日のMe-Moon記事でご紹介したLINE NEXTのステーブルコインウォレット「Unifi」のように、正当な用途でのステーブルコイン活用が広がる一方で、犯罪にもステーブルコインが多用されている実態が浮き彫りになりました。
衝撃② 北朝鮮ハッカーが20億ドルを窃取
北朝鮮関連のハッカーによる暗号資産の窃取額は20億2,000万ドルに達し、前年比51%増で過去最高を記録しました。この額は、2025年にハッキングで盗まれた暗号資産全体の76%を占めています。
つまり、暗号資産のハッキング被害の4分の3以上が、北朝鮮のハッカー集団によるもの。盗まれた資金は、北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源になっていると各国政府は指摘しています。
衝撃③ AI活用型詐欺が急増、被害4.5倍に
レポートが特に警鐘を鳴らしているのが、AIを活用した新型詐欺の急増です。
ディープフェイク(AIで作った偽の映像や音声)を使ったなりすまし詐欺や、AIが自動生成する大規模な詐欺ネットワークにより、暗号資産詐欺全体の被害額は約170億ドルに上りました。
特に深刻なのは、AIを使った詐欺は従来の詐欺と比べて1件あたりの被害額が4.5倍に達している点。より巧妙で、よりターゲットを絞り込んだ詐欺が可能になっているのです。
たとえるなら、以前の詐欺メールは「文法がおかしいから見抜けた」のが、今では完璧な日本語で、本物の企業そっくりのメールや通話が生成されるようになっているということです。
衝撃④ 制裁逃れが694%増の1,040億ドル
ロシア、イラン、北朝鮮といった制裁対象国が暗号資産を金融戦略に組み込んだ結果、制裁対象団体への送金は前年比694%増の1,040億ドルに膨れ上がりました。暗号資産が「国家レベルの制裁逃れの道具」として使われている実態が明らかになっています。
日本も他人事ではない——被害額1,219億円
「でも、日本は関係ないでしょ?」と思った方もいるかもしれません。
残念ながら、そうとは言えません。チェイナリシス・ジャパンの推計によると、2025年に日本の主要暗号資産取引所から送金された詐欺関連資金は約1,219億円に上ります。これは警察庁が発表した同年の詐欺被害総額の約38%に相当する金額です。
先日のMe-Moon記事でご紹介したMastercardの暗号資産パートナープログラムのように、暗号資産が「投機からインフラへ」と進化するなかで、犯罪への対策もますます重要になっています。
私たちが身を守るために知っておきたいこと
レポートの数字を見ると不安になりますが、暗号資産を安全に利用するための基本を押さえておけば、リスクは大幅に減らせます。
守り方① 取引所は金融庁登録済みのものを使う。 日本の金融庁に登録された暗号資産取引所は、厳格な規制のもとで運営されています。海外の無名な取引所は使わないのが鉄則です。
守り方② 「うますぎる話」には要注意。 「必ず儲かる」「元本保証」といった言葉は、暗号資産に限らず詐欺の常套句です。AIが生成した巧妙なメッセージでも、この原則は変わりません。
守り方③ 二段階認証は必ず設定する。 取引所やウォレットのアカウントには、二段階認証(2FA)を必ず設定しましょう。ハッキング被害の多くは、パスワードの流出が原因です。
用語ミニ解説
- チェイナリシス(Chainalysis): ブロックチェーン上の暗号資産の流れを追跡・分析する世界最大級の企業。70カ国以上の政府機関や金融機関に分析ツールを提供している(「デジタル世界の探偵事務所」のイメージ)
- ステーブルコイン: ドルや円のような法定通貨と価値が連動するよう設計された暗号資産。価格が安定しているため決済に使いやすいが、犯罪にも利用されるケースが増えている(「デジタルの固定レート通貨」のイメージ)
- ディープフェイク: AIを使って本物そっくりの偽動画・偽音声を生成する技術。著名人のなりすまし詐欺などに悪用されるケースが急増している(「AIが作る精巧なニセモノ」のイメージ)
- 二段階認証(2FA): パスワードに加えて、スマートフォンに届く確認コードなどを使ってログインする仕組み。不正ログインを防ぐ重要なセキュリティ対策(「玄関の鍵を二重にする」イメージ)
- 不正アドレス: 詐欺・ハッキング・マネーロンダリングなど不正な活動に使われていると特定された暗号資産のウォレットアドレス(「犯罪口座」のイメージ)
Me-Moon編集後記 🌙
1,540億ドル、20億ドル、1,219億円——レポートに並ぶ数字のスケールに、正直なところ圧倒されました。「暗号資産は怖い」と思う気持ちもわかります。
でも、少し冷静に考えてみると、オレオレ詐欺もフィッシングメールも、暗号資産が登場する前からずっとある問題です。テクノロジーが進化すれば、残念ながらそれを悪用する人も現れる。大切なのは、「怖いから触れない」ではなく、「仕組みを理解して、正しく守る」という姿勢ではないでしょうか。
チェイナリシスのような分析企業が犯罪の実態を「見える化」してくれることで、対策も確実に進んでいます。暗号資産の未来に期待しつつ、自分の資産はしっかり守っていきたいですね🌙
参考リンク
- チェイナリシス、「2026年暗号資産犯罪動向調査レポート」日本語版を公開 — PR TIMES, 2026年3月16日
- チェイナリシス公式レポートページ — Chainalysis
AIエージェントとは?仕組み・事例・始め方まで完全ガイド【2026年版】
