ブロックチェーンで「CO2の履歴」を追跡?三菱電機×東京科学大学が世界初の環境価値取引技術を開発

3行でわかるこの記事

  • 何が起きた? 三菱電機と東京科学大学が、水素やCO2、合成燃料の環境価値をブロックチェーンで正確に記録・追跡する技術を世界で初めて開発したと発表しました(2026年3月16日)
  • 重要なポイント プライベート型とパブリック型、2種類のブロックチェーンを組み合わせた「ハイブリッド構造」で、データの速さと安全性を両立しています
  • なぜ注目? カーボンニュートラル社会の実現には「この水素は本当にクリーンなのか?」を証明できる仕組みが不可欠で、ブロックチェーンがその切り札になりうるからです

はじめに

「ブロックチェーンは暗号資産のためだけの技術でしょ?」——そう思っている方は多いかもしれません。実は今、ブロックチェーンが意外な分野で活躍し始めています。

それが「環境」です。

この記事では、こんなことを解説していきます。

  • 三菱電機と東京科学大学が作った技術って、何がスゴいの?
  • そもそも「環境価値」ってどういう意味?
  • ブロックチェーンがカーボンニュートラルにどう役立つの?

エコとテクノロジーのちょっと意外な組み合わせ、一緒に見ていきましょう。

ひとことで言うと

水素やCO2がどこで生まれ、どう変換され、どれだけの環境価値があるのかを、改ざんできない形で記録・追跡する技術が誕生しました。「エネルギーの履歴書」をブロックチェーンで作るようなイメージです。

「環境価値」って何? 電気やCO2にも”履歴書”が必要な理由

カーボンニュートラルを目指す世界では、エネルギーの「出どころ」がとても重要です。

たとえば、同じ水素でも:

  • 太陽光発電で作った「グリーン水素」→ 環境価値が高い
  • 石炭を燃やして作った「グレー水素」→ 環境価値が低い

しかし、見た目は同じ水素。どうやって区別するのかが大問題でした。

さらに、水素がCO2と反応して合成燃料に変換されたり、電気に変わったりすると、「元々はグリーン水素だった」という履歴が途切れてしまいます。

スーパーで売っている野菜の「産地表示」を想像してみてください。畑から店頭まで追跡できるから「国産」と信用できる。エネルギーにも同じ仕組みが必要なのです。

世界初の「ハイブリッドブロックチェーン」 2つのチェーンを使い分ける仕組み

三菱電機と東京科学大学が開発した技術は、2種類のブロックチェーンを組み合わせた「ハイブリッド型」です。

プライベート型(トレーサビリティ用)

参加者を限定したブロックチェーンです。発電所や工場など、エネルギーの変換プロセスに関わる事業者だけが参加します。

役割: 「この水素は○○発電所の太陽光パネルで作られ、△△工場でCO2と合成されて燃料になった」という、変換履歴を詳細に記録すること。

社内の日報システムのように、関係者だけがアクセスできる仕組みです。

パブリック型(価値取引用)

誰でも参加できるオープンなブロックチェーンです。

役割: 記録された環境価値を市場で取引すること。「グリーン水素で作った合成燃料を買いたい」という事業者や個人が、信頼できるデータに基づいて取引できます。

こちらは、メルカリのように誰もが参加できるマーケットプレイスのイメージです。

技術的な「3つの工夫」 速さと安全性を両立

この技術には、膨大なエネルギーデータを扱うための工夫が詰まっています。

1. 3層構造のデータ管理

トレーサビリティ用ブロックチェーンの内部は「長期記憶」「短期記憶」「センサー」の3層に分かれています。温度や発電量などのリアルタイムデータはセンサー層で取得し、短期記憶で一時保管、重要なものだけを長期記憶に格納します。

人間の脳の記憶の仕組みに似ていて「今日の体温」はすぐ忘れても、「入院した日の記録」はずっと残しておくイメージです。

2. BFT方式による高速合意

データを記録する際の「みんなで確認する仕組み」にBFT(ビザンチン障害耐性)方式を採用。一部の参加者が不正なデータを送信しても、正しい結論を出せる仕組みです。処理速度も速く、大量のデータをすばやく記録できます。

3. 改ざんがほぼ不可能

ブロックチェーンの基本的な特性——データが鎖のようにつながっているため、1つのデータを書き換えると前後のすべてが矛盾する——を活かし、環境価値の記録を高い信頼性で保管します。

2030年代の実用化を目指して 地域のエネルギー循環に貢献

三菱電機と東京科学大学は、2030年代の実用化を目指しています。

最終的には、地域の太陽光発電所で作った電気や水素の環境価値を、地域の企業や住民が安心して売買できる「分散型価値取引市場」の構築を目指しています。

地産地消の野菜マーケットのように、地域で作ったクリーンエネルギーの価値が、地域の中で循環する そんなカーボンニュートラル社会の基盤技術になるかもしれません。

用語ミニ解説

  • カーボンニュートラル: CO2の排出量と吸収量を差し引きゼロにすること。「出した分だけ吸収する」バランスを取る考え方です(家計の収支をプラスマイナスゼロにするイメージ)
  • ハイブリッドブロックチェーン: プライベート型(参加者限定)とパブリック型(誰でも参加可能)を組み合わせたブロックチェーン。両方のメリットを活かせます
  • トレーサビリティ: 製品やデータの「たどれる記録」。野菜の産地表示のように、モノの来歴を追跡できる仕組みです
  • BFT(ビザンチン障害耐性): ネットワーク参加者の一部が故障したり嘘のデータを送っても、全体として正しい結論を出せる合意方法。名前は古代ローマの「ビザンチン将軍問題」という有名なパズルに由来します
  • グリーン水素: 再生可能エネルギー(太陽光、風力など)で水を分解して作った水素。製造過程でCO2を出さないため環境価値が高いとされます
📎 あわせて読みたい

Me-Moon編集後記 🌙

「ブロックチェーン=暗号資産」というイメージが強い中で、環境問題の解決に使われるという話は新鮮でした。

考えてみれば、ブロックチェーンの本質は「改ざんできない記録を残す」こと。それはお金の取引だけでなく、CO2の排出量やエネルギーの来歴を証明するためにも使える、むしろ相性の良い技術なのかもしれません。

2030年代に「自分が使っている電気がどこで作られたか」をスマホで確認できる そんな時代が来たら、エネルギーに対する意識も変わりそうで楽しみです🌙

参考リンク

この掲載情報は各取得情報によって提供されています。

※内容の真偽や広告内容についてはご自身でご判断ください。

監修者

小宮 滉

コインチェック株式会社を経て、現在はGUILD株式会社および一般社団法人Web3人材マネジメント協会の代表理事を務める。

Web3・仮想通貨分野では、「NGG(NinjaGuild_Japan)」というコミュニティの運営や、「IVS Crypto THE DEMODAY」MetaMeトラックでの優勝など、多くの実績を有する。

また、AI・ブロックチェーン開発を強みとしたDXサービスを提供し、企業の成長を支援します。AI・ブロックチェーン技術との統合を通じて、DX体験をシームレスに実現し、ユーザーと企業の双方に新たな価値を創出することを目指して、開発支援やマーケティングを行っております。

X (Twitter) →

一緒に記事を書いてみませんか?✍️

ライター登録はこちら →