3行でわかるこの記事
- 何が起きた? 毎年沿道から眺めてきた青森ねぶた祭で、8月2日から6日、跳人として跳ねた記録がスマホに残る実証実験が始まります。
- 重要なポイント 山車の近くで参加ボタンを押すとデジタル参加証がアプリに届き、祭りが終わったあとの抽選で青森の地域特産品が当たります。
- なぜ注目? 担い手が減っている祭りに、外から来た人が行列の中へ入っていくきっかけを作ろうとしているからです。
はじめに
「ねぶた祭って、見に行くものだよね」
8月の夕方、青森の街に「ラッセラー、ラッセラー」の声が近づいてきます。人垣の後ろから背伸びして、目の前を跳ねていく衣装の人たちをスマホ越しに眺める。入っていいものか分からないまま、数十秒が過ぎていく。地元の盆踊りでも花火大会でも、輪の外側に立ったまま終わった夏に心当たりのある方は多いかもしれません。
今年の青森ねぶた祭では、その数十秒の先が少し変わります。行列の中に入って跳ねると、跳ねたという記録がスマホの中に残るからです。
この記事では、こんなことをお伝えします。
- デジタル参加証って、何をすると手に入るの?
- 山車の近くで跳ねたことを、どうやって確かめているの?
- 跳ねた夏は、祭りのあとどんな形で返ってくるの?
聞き慣れない言葉も出てきますが、できるだけわかりやすくお伝えしますね。
ひとことで言うと
青森ねぶた祭で跳人として跳ねると、跳ねたという事実だけがスマホに残り、住所は運営に渡らないまま、抽選で当たった青森の特産品が家に届く。そんな実験が8月2日から始まります。ここからは、その背景と仕組みを順番に見ていきましょう。
デジタル参加証は、何をすると手に入る?
やることは、跳ねる前にアプリを開いて、行列に入る直前にボタンを1回押すことです。
流れは3段階になっています。跳人として参加する人は、事前に「ねぶた祭アプリ」にアクセスして登録します。次に、祭りへ参加する直前にアプリの参加ボタンをタップします。ここで一定の条件を達成すると、デジタル参加証がアプリの中に付与されます。そして祭りが終わったあと、その参加証をもとに抽選が行われます。
大事なのは、ボタンがいつでもどこでも押せるわけではないところです。押せるかどうかを決めているのは、山車がその瞬間どこを進んでいるかです。ここは次の項で詳しく見ます。
この取り組みは「ねぶた祭DAO」と呼ばれる実証実験で、日立ソリューションズ東日本とぷらっとホームの2社が2026年7月27日に発表しました。実証実験は8月2日から8月6日に行われ、今回が第2弾になります。参加証の発行と管理には、ぷらっとホームが持つトークン化の技術とDAOの基盤が使われます。
残り方は写真とは違います。カメラロールに増えていくのは自分が撮った風景で、あとから見返すまで誰にも知られません。デジタル参加証のほうは、跳人として行列の中にいたという事実そのものが記録になります。発表資料でも、参加者の行動や貢献をデジタルに記録して見えるようにする仕組みだと説明されています。
山車の近くで跳ねたって、どうやって分かるの?
ボタンを押せる場所を決めているのは、ねぶたの山車そのものです。
ねぶた行列とともに進行するようにGPSトラッカーを設置し、そこで把握したねぶたの運行位置をもとに、跳人が参加できるエリアを算出します。行列は街を進んでいくので、参加できるエリアも山車と一緒に移動していきます。山車が見えない輪を引きずって歩いていて、その輪の中に立っている人だけがボタンを押せる、という状態に近いです。
ここが、家のソファで応募する抽選と決定的に違うところです。ボタンを押すには、その瞬間に、その山車のそばまで自分の足で行っていないといけません。沿道で写真を撮っているだけでは輪の中に入りません。跳ねた記録は、その夜その場所にいたことと切り離せない形で残ります。
跳ねた夏は、祭りのあとどう返ってくる?
祭りが終わったあと、取得したデジタル参加証をもとに抽選が行われ、当選者には青森に関連する地域特産品などが贈られます。
想像してみてください。8月の熱気が抜けて、日常が戻ってきたころ。自分の家のチャイムが鳴って、青森からの荷物が届く。開けると、あの日跳ねていた街の特産品が入っている。夏の記憶が、もう一度だけ玄関先に戻ってくる感じです。
面白いのは、残るものと残らないものがきれいに分かれていることです。残るのは、跳人として跳ねたという事実。残らないのは、自分の住所です。
住所を運営に教えないまま、特産品は届くの?
抽選と聞いて引っかかるのは、「当たったら住所を書かされるのでは」という点だと思います。応募のたびに名前と住所を打ち込むのが気になって、そこで手が止まることもあります。
今回はそこに答えが用意されています。ギフトサービス会社のサービスを使い、当選者に通知される引き換えURLから配送先の情報を直接入力する形にしてあります。この入力で情報が伝わるのは配送会社だけで、アプリの運営者は住所などの個人情報を保持しない仕組みだと発表されています。
宅配便の伝票を、主催者の机を経由させずに配送会社へ直接渡すようなものです。運営側は当たった参加証を扱いますが、その人がどこに住んでいるかは持ちません。日立ソリューションズ東日本のニュースリリースでも、個人情報を運営者が保持しない安全な運用モデルの有効性を確認することが、検証の目的に挙げられています。
祭りに加わるために身元を差し出さなくていい。この安心があるかないかで、ボタンを押すときの気持ちはかなり変わってきます。
なぜ、インスタの反応から青森の特産品に変わった?
去年の第1弾で用意されていたのは、Instagram連携による評価機能でした。跳ねた人が受け取るのは、投稿した写真に集まる反応です。今年はそこを、抽選で届く青森の特産品に入れ替えました。
理由は発表資料に書かれています。第2弾で検証するのは、参加者への直接的なインセンティブの提供と、安全なシステムの有効性です。画面の中で完結する評価から、手元に届く見返りへ。確かめたいのは、インセンティブの提供が一般の方の跳人参加を促す行動変容のきっかけとなるかどうかだとされています。
その先には、祭り側の事情があります。発表資料は、地域の祭りが人口減少や少子高齢化の影響を受け、担い手不足や参加者の減少といった課題を抱えていて、従来の運営形態の維持が難しくなっていると説明しています。ねぶたは山車を作る人がいて、跳ねる人がいて、初めて成り立つ祭りです。その跳ねる人が、年々足りなくなっている。
跳人は足りていない。沿道には、入っていいのか分からないまま立っている人がいる。特産品はご褒美というより、この2つのあいだにある距離を縮めるための後押しという位置づけです。2社はこの取り組みを、データを活用してより魅力的な祭りや観光づくりへつなげ、企業の地域貢献を支えるデジタル技術を用いた持続可能な地方創生モデルの創出をめざす実験だとしています。
デジタル参加証が変えるのは、祭りの見た目ではありません。変わるのは、沿道と行列のあいだにある、あの数十秒の迷いのほうです。
用語ミニ解説
- 跳人(はねと): 青森ねぶた祭で、山車の周りを飛び跳ねながら進む参加者のことです。専用の衣装を着て「ラッセラー」と声を出しながら跳ねます。
- デジタル参加証(NFT): 誰がいつ何に参加したかを、あとから書き換えにくい形で記録したデータです。今回は跳人として跳ねた記録が、アプリの中に届きます。
- DAO: みんなで運営する仕組みを、管理者ひとりに任せずネット上の記録で回していく考え方です。今回は祭りの参加者コミュニティに応用されています。
- ThingsToken / ThingsDAO: 今回の参加証の発行と管理に使われている、ぷらっとホームのトークン化技術とDAO基盤の名前です。
- GPSトラッカー: 現在地を測って知らせる小型の機器です。今回はねぶた行列と一緒に進むように設置されます。
- 実証実験: 本格導入の前に、実際の現場で試して効果や安全性を確かめる取り組みのことです。
Me-Moon編集後記 🌙
祭りの担い手不足は、日本中の街にあります。青森の夏で試された仕組みが、来年はどこかの盆踊りの輪に届いているかもしれません。
見ているだけだった側が、いつのまにか作る側に回っている。そんな夏の入り方があってもいいですね🌙
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参考リンク
- Web3技術を活用した地方創生を実現する「ねぶた祭DAO」の実証実験第2弾を開始 — ぷらっとホーム, 2026-07-27
- Web3技術を活用した地方創生を実現する「ねぶた祭DAO」の実証実験第2弾を開始 — 日立ソリューションズ東日本, 2026-07-27
- Web3技術を活用した地方創生を実現する「ねぶた祭DAO」の実証実験第2弾を開始 — PR TIMES(日立ソリューションズ東日本), 2026-07-27
