ローソンのJPYC決済、今日から自分も使える?2つの店で確かめられたこと

3行でわかるこの記事

  • 何が起きた? ローソン高輪ゲートウェイシティ店のレジで、日本円のデジタル通貨JPYCを使った支払いが実際に完了しました。
  • 重要なポイント 店に専用の決済端末を置かず、自分のスマホに出したバーコードをいつものレジで読み取る方式で、レジと連動したステーブルコイン決済の成功は日本初です。
  • なぜ注目? 8月17日には2つ目の店で、円だけでなくドルのステーブルコインまで対象を広げた実証が続くからです。

はじめに

レジに商品を並べて、スマホを出す。店員がそれを、いつも商品のバーコードを読んでいるあの機械にかざす。8月6日、東京のローソンで、このやりとりを通って支払われたのは、円のデジタル版であるJPYCでした。レジ横に見慣れない機械が増えたわけでもありません。

この記事では、こんなことを解説していきます。

  • ステーブルコインの「ステーブル(安定)」って、何が安定しているの?
  • ローソンのレジでは、具体的にどんな手順で支払いが進んだの?
  • 今日から自分も同じ支払いができるの?

難しそうに見えるかもしれませんが、できるだけわかりやすくお伝えしますね。

ひとことで言うと

ローソンが2つの店で確かめているのは、専用の機械を足さずに、いつものレジでデジタル通貨の支払いが最後まで通るかどうかです。8月6日の1店舗目は終わり、8月17日の2店舗目はこれから。では、今日レジに並んだ自分はどうなのか。ここからは、その背景と仕組みを順番に見ていきましょう。

そもそも、ステーブルコインの「ステーブル(安定)」って何が安定しているの?

安定しているのは、値段です。

暗号資産と聞いて多くの人が思い浮かべるビットコインは、朝と夜で価格が変わります。値上がりを期待して持つには向いていますが、レジの前で「今日はいくら分になるんだろう」と考えなければならないお金は、買い物には使いにくいものです。

ステーブルコインは、そこを逆から作ったデジタルのお金です。円やドルといった普通のお金と同じ価値を保つように設計されているため、財布の中の千円札が今日も明日も千円であるのと同じ感覚で持っていられます。今回ローソンのレジを通ったJPYCは、その円版にあたります。

こうしたお金を日本で扱えるようになった背景には、法律の整備があります。ITmedia NEWSによれば、日本では2023年6月の改正資金決済法が施行されて以後、円建てステーブルコインの発行・流通環境が整いつつあるとされています。器はすでに用意された。あとは、実際の店のレジで使えるのかどうかです。

ローソンのレジで、8月6日に何が起きた?

舞台になったのは、ローソン高輪ゲートウェイシティ店です。

Real Soundによると、この日の決済に用いられたのは日本円ステーブルコインJPYCでした。利用者側の決済手段には、HashPortが提供する財布アプリが使われています。銀行のようにどこかへお金を預ける形ではなく、自分で鍵を持って自分で管理するタイプのアプリです。

支払いの流れは、ITmedia NEWSが手順を説明しています。まず利用者がアプリに決済用のバーコードを表示し、店員がそれをレジで読み取ります。次に利用者がアプリの画面で金額を確認して署名し、送金します。ブロックチェーン上で着金が確認されるとレジ側に情報が連携され、決済が完了します。

言葉にすると工程が多いように見えますが、レジの前で人がすることは、スマホを見せて、画面に出た金額を確かめて、指で承認するだけです。コード決済のアプリを開いて店員に見せる動作と、体験としてはほとんど変わりません。違うのは、レジの向こう側です。

専用の機械がいらないって、どういうこと?

新しい支払い方法がひとつ増えるたび、レジ周りには読み取り機が増えてきました。店頭にコードを貼り出す方式もありますが、その場合は店がそのコードとお金の受け取り口を自分で用意します。お店にとって新しい支払い方法は、場所とコストと手間の話でもあります。

今回は、そのどれもしていません。Impress Watchは、この仕組みでは専用の決済端末は不要になると伝えています。ネットショップ担当者フォーラムはさらに具体的で、専用端末も店頭掲出のQRコードも使わず、利用者がスマホに表示したバーコードをPOSレジで直接読み取る方式を採用した、と説明しています。使われたのは、いつも商品のバーコードを読んでいるあの読み取り機です。

店側の負担はもうひとつ軽くなっています。ペイメントナビによると、店舗がウォレットを開設・管理することなく、通常のコンビニPOSに組み込まれた仕組みを通じてステーブルコイン決済を受け付ける構成で、店頭での決済が完了することを確認したとされています。店員がデジタル通貨の口座を作ったり、残高を見張ったりする必要はありません。

機械を足さず、コードも貼らず、店が口座も持たない。それでレジの会計が最後まで通りました。ペイメントナビが、日本で初めてコンビニのPOSと連動したステーブルコイン決済が成功した事例だとしているのは、この組み合わせのことです。新しいお金を店に入れるとき、これまでは必ず何かを増やす必要がありました。そこを増やさずに済んだ、という一点が今回の新しさです。

今日から自分も使える?8月17日の2店舗目で試されること

答えは、まだです。

ITmedia NEWSは、この実証について対象は3社の関係者に限り、一般の来店客は参加しないと明記しています。3社とは、財布アプリを提供するHashPort、通信のKDDI、そして店舗を出したローソンです。高輪ゲートウェイシティ店に行ってスマホを出しても、今日の買い物がJPYCで払えるわけではありません。

がっかりする話に聞こえるかもしれませんが、順番としてはむしろ健全です。決済は一度でも失敗すればレジが止まり、後ろに並んだ人の時間を奪います。だからまず関係者だけの環境で、レジが実際に通るのかを確かめています。

そして2つ目の店が控えています。ネットショップ担当者フォーラムによると、8月17日はローソンゲートシティ大崎アトリウム店で、利用する財布アプリはMetaMask、利用するコインはUSDC、USDT、JPYCと、8月6日とは条件が変わります。ネットスターズの案内でも、この回の対応する財布アプリはMetaMaskだとされています。

1つ目の店で確かめられたのは、レジが実際に通ることでした。2つ目の店でこれから確かめるのは、財布アプリを別のものに変え、円建てだけだった対象にドル建てのUSDCとUSDTを加えても、同じレジで同じように通るのかです。1回うまくいったかどうかではなく、組み合わせを変えても成り立つのか。ここが固まれば、あとは対応する店と通貨が増えていくだけになります。

自分の番が回ってきたときの心配も、ひとつ減りそうです。ブロックチェーンで送金するときには、手数料にあたるガス代が別途かかります。ペイメントナビによると、今回は利用者がガス代を負担しないガスレスの形で行われ、それも日本初になるとされています。レジでおにぎりをひとつ買うのに手数料の計算がいるようでは、誰も使いません。

そして、その日が来たときに自分がやることは、すでに見えています。財布アプリを開き、バーコードを表示して、店員に読んでもらい、画面の金額を確認して指で承認する。覚え直す操作も、レジで買う専用のカードもありません。いま準備しておくものが何もないのは、準備がいらない形で試されているからです。

レジの向こうで、お金の形はどこへ向かう?

行き先はコンビニだけではありません。

Real Soundによると、コンビニ以外の展開として、関東の歯科医院2院で医療機関への導入の試験的な開始も予定されています。レジがある場所、会計がある場所であれば、同じ考え方がそのまま乗ります。ITmedia NEWSは、AIエージェントが人の代わりに支払いを済ませる仕組みの導入も視野に入れていると伝えています。

ただ、そこまで進んでも、私たちの側で起きることは大きくは変わらないはずです。レジ横の支払い方法の一覧に、見慣れない名前がひとつ増える。最初は誰も使っていないのに、気づくと前に並んだ人が使っている。交通系のカードも、コード決済も、そうやって日常になりました。新しいお金は特別な場所に現れるのではなく、いつも寄る店のレジに静かに降りてきます。

用語ミニ解説

  • ステーブルコイン: 円やドルなど普通のお金と同じ価値を保つように作られたデジタルのお金です。値動きを抑えてあるので、投資よりも支払いに向いています。
  • JPYC: 日本円と同じ価値で使えるように設計された、日本のステーブルコインです。今回ローソンのレジを通ったのがこの通貨です。
  • ウォレット: デジタル通貨を出し入れするためのスマホ用の財布アプリです。今回のように、会社に預けず自分で鍵を持つ形のものをノンカストディアル型と呼びます。
  • ガス代: ブロックチェーンで送金するときにかかる手数料です。今回の実証では利用者が負担しない形が取られました。
  • POSレジ: 店の会計と売上の記録をまとめて行うレジのことです。コンビニで商品のバーコードを読み取っているあの機械が該当します。

Me-Moon編集後記 🌙

新しい技術のニュースは、たいてい専用の機械や専用のアプリとセットでやってきます。今回いちばん面白かったのは、増えた物が何もなかったことでした。

こちらが覚え直さなくていい変化は、静かなぶん強いです。自分の番が回ってきたら、身構えずに面白がって試してみたいですね🌙

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参考リンク

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監修者

小宮 滉

コインチェック株式会社を経て、現在はGUILD株式会社および一般社団法人Web3人材マネジメント協会の代表理事を務める。

Web3・仮想通貨分野では、「NGG(NinjaGuild_Japan)」というコミュニティの運営や、「IVS Crypto THE DEMODAY」MetaMeトラックでの優勝など、多くの実績を有する。

また、AI・ブロックチェーン開発を強みとしたDXサービスを提供し、企業の成長を支援します。AI・ブロックチェーン技術との統合を通じて、DX体験をシームレスに実現し、ユーザーと企業の双方に新たな価値を創出することを目指して、開発支援やマーケティングを行っております。

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