「AIがデザインした電車」に乗れる日が来た?相鉄13000系が示す鉄道デザインの新しいかたち

3行でわかるこの記事

  • 何が起きた? 相模鉄道(相鉄)が、生成AIを活用してデザインされた新型車両「13000系」を2026年3月30日から営業運転開始すると発表しました
  • 重要なポイント デザイナーのスケッチや海の生き物を生成AIに学習させ、数千ものバリエーションの中から最終デザインを選定。人のクリエイティブとAIの発想力を掛け合わせた「共創デザイン」が鉄道車両で実現しました
  • なぜ注目? 毎日何十万人もの通勤客が利用する「日常の乗り物」に生成AIが入り込んだ、身近で画期的な出来事だからです

はじめに

日本全国で1日に鉄道を利用する人は約4,700万人——国民のおよそ3人に1人が、毎日電車に揺られている計算です。

でも、ふだん乗っている電車のデザインがどうやって生まれたか、考えたことはありますか? 実は今、その「電車のデザインの作り方」に大きな変化が起きています。

2026年3月、相模鉄道(相鉄)が発表した新型車両「13000系」は、生成AIをデザイン開発に活用した車両です。デザイナーのスケッチをAIに学習させ、数千ものデザインバリエーションを生成。その中から選ばれた案を、さらに人の手で磨き上げて完成させました。

3月30日から営業運転が始まるこの車両。私たちが毎日乗る「日常の乗り物」に、AIのクリエイティブが入り込む時代がやってきたのです。

この記事では、こんなことを解説していきます。

  • 相鉄13000系のデザインはどうやってAIが関わったの?
  • 「AIがデザインした」とはどういう意味?
  • 鉄道デザインの未来はどう変わる?

ひとことで言うと

相鉄の新型車両13000系は、デザイナーのスケッチと海の生き物の画像を生成AIに学習させ、数千ものデザイン案の中から選ばれた一つを人間が磨き上げた「AI共創デザイン」の車両です。

相鉄の「デザインブランドアッププロジェクト」とは?

まず背景を理解するために、相鉄のデザイン戦略を見てみましょう。

相鉄グループは2014年から「デザインブランドアッププロジェクト」を推進しています。駅の内装、ホームの案内サイン、そして車両デザインに至るまで、「安全×安心×エレガント」をコンセプトに統一感のあるブランドを作り上げてきました。

シンボルカラーは、横浜の海をイメージした濃紺色「YOKOHAMA NAVYBLUE」。このカラーで統一された車両は、相鉄線の「顔」として定着しています。

そして今回の13000系では、従来のコンセプトに「未来」というキーワードが新たに加わりました。この「未来」を形にするために選ばれた手段が、生成AIだったのです。

アートディレクションを担当したのは、水野学氏(good design company代表)。企業ブランディングの第一人者として知られる水野氏のもとで、AIと人間の共創デザインが実現しました。

生成AIはデザインのどこに関わったの?

「AIがデザインした」と聞くと、ボタンひとつで完成形が出てきたイメージを持つかもしれません。でも実際のプロセスは、もう少し繊細なものです。

ステップ① デザイナーのスケッチを学習

まず、デザイナーが描いたスケッチや3Dモデリングのデータを生成AIに学習させました。AIが「このプロジェクトが目指す方向性」を理解するための「お手本」を与えた、ということです。

ステップ② 海の生き物のイメージも学習

次に、海の生き物の画像データも学習素材に加えました。相鉄のブランドカラー「YOKOHAMA NAVYBLUE」が横浜の海をイメージしていることから、「水を切り開いて進む生き物の流麗さ」をデザインに取り込みたいと考えたのです。

ステップ③ 数千のバリエーションを生成

学習したAIが、数千ものデザインバリエーションを次々と生成。これまで人間のデザイナーが何週間もかけて出していたアイデアの数を、AIが短時間で大量に出してくれたのです。

たとえるなら、100人のデザイナーに「横浜の海を走る電車を描いてください」と同時にお願いしているようなもの。そこから特に魅力的な案をピックアップしていくわけです。

ステップ④ 人間が選別・修正

ここからが人間の出番です。数千の案の中から最も優れたものを人の目で選び、さらに細部を修正して完成度を高めていきました。

つまり、13000系のデザインは「AIの発想力 × 人間の審美眼」の産物。「AIが作った」のではなく、「AIと人間が一緒に作り上げた」と言う方が正確です。

13000系の注目ポイント5選

実際に目にできる13000系の特徴を見てみましょう。

ポイント① 「海を切り開く生き物」のようなフォルム

先頭車両のデザインは、まさに海の生き物が水を切り開いて進むような流麗で力強い造形。基調色はもちろん「YOKOHAMA NAVYBLUE」です。

ポイント② 「未来を見つめる目」の前照灯

特徴的な前照灯は「未来を見つめる目」をイメージ。切れ長のスタイリッシュなデザインで、その両端には新たに「コンセプトエンブレム」が配置されています。

ポイント③ ボルトやねじが見えない外観

車体の外観は、ボルトやねじを極力目立たなくする処理が施されています。これにより、周囲の風景が車体に映り込み、走行中の車両がまるでひとつの芸術作品のように見えるのだとか。

ポイント④ ガラスで統一された開放的な車内

車内はグレーを基調とした落ち着いた内装で、ガラス製の荷棚や仕切り、貫通扉を採用。開放感のある空間が実現されています。先頭車の座席数は従来モデルより6席増加し、1編成あたりでは12席増えているのもうれしいポイントです。

ポイント⑤ 全車両にフリースペースを設置

ベビーカーや車椅子に対応したフリースペースが全車両に設置されました。一部の優先席には、立ち座りしやすい「ユニバーサルデザインシート」も採用されており、誰にとっても使いやすい車両を目指しています。

AI×鉄道デザインの意味——「効率」ではなく「創造」の共創

ここでひとつ、大切なポイントを押さえておきましょう。

これまでのAI活用は「業務の効率化」が中心でした。先日ご紹介したexaBase 生成AIの6ツール連携DATAFLUCTのAIエージェントチームは、いずれも「仕事を速くする」ためにAIを活用していました。

それに対し、相鉄の13000系は「創造性を広げる」ためにAIを使っています。

デザイナーが思いつかなかった形を、AIが提案してくれる。人間だけでは到達できなかった「美しさ」を、AIとの対話の中で見つけていく。この「効率」ではなく「創造」のAI活用は、今後さまざまな分野に広がっていくかもしれません。

用語ミニ解説

  • 生成AI(Generative AI): テキストや画像などの指示から新しいコンテンツを自動で作り出すAI技術。デザイン分野では、テキストの説明や参考画像から新しいデザイン案を大量に生成するのに使われる(「AIのデザインアシスタント」のイメージ)
  • 3Dモデリング: コンピュータ上で立体的なデザインを構築すること。鉄道車両のデザインでは、外観や内装の形状を仮想空間で検討する工程に使われる(「デジタルの粘土細工」のイメージ)
  • デザインブランドアッププロジェクト: 相鉄グループが2014年から推進する、駅・車両・サービスのデザインを統一するプロジェクト。統一感のあるブランド体験の提供を目指している(「相鉄の顔づくりプロジェクト」のイメージ)
  • YOKOHAMA NAVYBLUE: 相鉄のブランドカラー。横浜の海をイメージした濃紺色で、車両・駅・制服に統一的に使用されている(「相鉄のアイデンティティカラー」のイメージ)
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Me-Moon編集後記 🌙

「生成AIでデザインされた電車に毎日乗る」——はじめて聞いたときは不思議な感覚でしたが、考えてみると、すでにAIが作った文章を読み、AIが撮影支援した写真を見て、AIがレコメンドした曲を聴いている毎日。乗り物のデザインにAIが関わるのは、むしろ自然な流れなのかもしれません。

特に印象的だったのは、AIが出した数千のデザイン案を、最終的に人間の目で選び、人間の手で仕上げたというプロセス。AIは「万能のデザイナー」ではなく、「とてつもなくアイデアの多い共同制作者」。この関係性が、テクノロジーと人間の理想的な距離感を教えてくれている気がします。

こういう小さな進化の積み重ねが、気づけば暮らしを変えているのかもしれませんね🌙

参考リンク

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監修者

小宮 滉

コインチェック株式会社を経て、現在はGUILD株式会社および一般社団法人Web3人材マネジメント協会の代表理事を務める。

Web3・仮想通貨分野では、「NGG(NinjaGuild_Japan)」というコミュニティの運営や、「IVS Crypto THE DEMODAY」MetaMeトラックでの優勝など、多くの実績を有する。

また、AI・ブロックチェーン開発を強みとしたDXサービスを提供し、企業の成長を支援します。AI・ブロックチェーン技術との統合を通じて、DX体験をシームレスに実現し、ユーザーと企業の双方に新たな価値を創出することを目指して、開発支援やマーケティングを行っております。

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