AIで作った絵が、誰かの作品にそっくりだった。そのとき何を確かめられる? 生成AIの新しい原則が8月25日に決まった

AIで作った絵が、誰かの作品にそっくりだった。そのとき何を確かめられる? 生成AIの新しい原則が8月25日に決まった

3行でわかるこの記事

  • 何が起きた? 政府が2026年8月25日、生成AIの事業者に向けた新しい原則「プリンシプル・コード」を決めました。
  • 重要なポイント AIで作った絵が誰かの作品と似ていたとき、作った本人が学習データの確認を求められる道が用意されます。
  • なぜ注目? 学習方法や学習データが各社のサイトに載り、原則を受け入れた会社は一覧で公表されるからです。

はじめに

「AIに描いてもらった絵が、どこかで見た作品に似ている気がする。」

そんなふうに感じて、投稿ボタンの上で指が止まったことはないでしょうか。

言葉を打ち込むだけで、数秒後にきれいなイラストが返ってくる。楽しくて何枚も作ってしまいます。ただ、出てきた1枚の雰囲気に見覚えがあると、急に落ち着かなくなります。このAIは何を見て絵を覚えたのだろう。似ている作品を描いた人がいたら、その人はこれを知っているのだろうか。

確かめたくても、聞く先が見当たりません。その聞く先について、2026年8月25日に政府が答えを1つ出しました。生成AIの事業者に向けた新しい原則「プリンシプル・コード」です。

この記事では、こんなことをお伝えします。

  • プリンシプル・コードって何?
  • AIで作った絵が誰かの作品と似ていたとき、何を確かめられる?
  • 罰則がないのに、どうして学習データが表に出てくるの?

制度の話が続きますが、AIで絵を作る人にも、自分で絵を描く人にも関わる内容です。やさしくお伝えしますね。

ひとことで言うと

生成AIの会社は、学習方法や学習データを自分のサイトで公表し、権利者やAIの利用者から確認を求められたら応じる。応じないなら、その理由を説明する。今秋から始まる新しい原則は、この形で作られています。ここからは、その背景と仕組みを順番に見ていきましょう。

その絵、どこかで見た気がする。今までは誰に聞けばよかった?

指が止まったまま、似ている気がする作品の名前を検索窓に打ち込んでみます。似た構図の絵はいくつも出てくるけれど、自分が使ったAIがその作品を読み込んでいたのかどうかは、どこにも書いてありません。

サービスの説明ページで目に入るのは、使い方と料金です。そのAIが何を材料に絵を覚えたのかという一番知りたい部分は、探しても見つからないことがあります。

同じ行き止まりは、描く側にもありました。自分のイラストや写真をネットに上げている人が、それがAIの学習に使われたのかを知りたくても、どこに聞けばいいのかが決まっていなかったからです。AIを使う人も、作品を作る人も、同じ場所で足を止めていました。その足止めをほどく手順が、8月25日に決まっています。

8月25日に決まった生成AIの原則は、何を求めている?

政府は2026年8月25日、生成AIの事業者に向けた原則「プリンシプル・コード」を決めました。柱は3つで、学習データの概要を公表すること、権利者へ開示すること、AIの利用者へ開示することです。

1つ目は公表の話です。AIモデルの構造やライセンス、学習方法、学習データといった透明性に関する情報に加えて、知的財産権を守るための取り組みの状況を、自社のサイトなどで開示します。インターネット上からデータを自動で集めるときに使うプログラムの概要も、ホームページで公開するよう求められます。

2つ目は、作品を作った人に向けた開示です。漫画や音楽、新聞記事の権利者から要請があった場合、一定の条件のもとで、その著作物が学習データに含まれているかどうかを明らかにするよう促します。想定されているのは、自分の作品をネット上で公開している人が、それと同じか似たものを出力したAIの学習に自分の作品が使われていたかを、法的手続きの中で確認する場面などです。

3つ目が、AIを使う側に向けた開示です。画像を作れるAIサービスで絵を出した人が、その絵と同じ、あるいは似ている作品を見つけたときに、そのサービスに使われたAIモデルの学習データを確認する。AIで絵を作った本人が、自分の出した1枚について動けるようになる原則です。

対象になるのは、AIモデルやAIサービスを開発、提供する事業者です。日本でAIサービスを展開している海外の会社も含まれるので、運営元が海外だからという理由で外れることはありません。逆に、第三者の権利を侵害する生成物が作られるおそれが著しく低い生成AIシステムを開発する場合などは、対象から外れます。

AIで作った絵が似ていたとき、これから何を確かめられる?

もう一度、あの1枚に戻ります。見覚えのある絵を前にして、これからできることは2つあります。

まず、使ったサービスの会社のサイトを開きます。原則を受け入れた会社のホームページには、生成AIの学習プロセス、学習データの種類、集め方が並びます。どんな材料から絵の描き方を覚えたのか、ネット上のデータをどうやって集めたのか。これまで想像するしかなかった部分が、読める文章として置かれます。

それでも足りなければ、会社に確認を求めるという2つ目の道があります。この絵を出したAIモデルの学習データを教えてほしい、という求めです。ここには条件があって、求めた情報を法的手続きに使わないことなどが前提になります。法的手続きの中で確かめたいときは、権利者に向けた2つ目の原則の側が受け皿になります。

確かめてみて心当たりの作品が出てこなければ、そのまま投稿できます。含まれていたと分かれば、公開をやめる、構図を変えて作り直す、その作品を思わせる言葉を指示から外す、といった判断が自分でできます。もやもやを抱えたまま投稿するか、確かめにいくか。その選択肢が手元に増えます。

自分で絵を描いている人には、もう1本の道があります。自分の作品と似たものを出したAIに対して、権利者の側から確認を求めにいける。使う側と作る側で入口が分かれているので、両方をやっている人はその日の立場に合わせて選べます。

サービスを選ぶときの見どころも増えます。これからは料金と使いやすさに加えて、学習データの説明ページという比べどころが並びます。何を読ませて絵を覚えさせたのかを丁寧に書いている会社と、そこに触れない会社。同じ値段なら、書いてある方を選びたくなります。仕事の資料や商品の画像に使うなら、なおさらです。

しかも、この見比べにお金はかかりません。会社のサイトを開いて読むだけです。絵を作るときの数分を、説明ページに使うかどうかだけの違いになります。

罰則ゼロなのに、学習データが表に出てくるのはどんな仕組み?

正直に言うと、この原則に法的な拘束力はありません。守らなかった会社に罰則が科されることもありません。それでも情報が動き出す仕掛けが、届け出のかたちに入っています。

事業者は、原則を受け入れるかどうかを届け出ます。受け入れる場合は書類にその旨を明記し、一部を拒否する場合には理由を書く。そして届け出た事業者については、それぞれの受け入れ状況が一覧になって公表されます。実施するか、実施しないならその理由を説明する。この「コンプライ・オア・エクスプレイン」と呼ばれる考え方が、原則全体の土台になっています。

学習データについて書かない会社は、書かない理由のほうを届け出に残すことになります。罰金の代わりに、説明が求められる形です。

限界も書いておきます。営業秘密や安全性に関わる機微な情報は、強制的な開示を求める対象から外れています。法的な強制力も罰則規定もないため、事業者からどこまで情報を引き出せるかという実効性は、これからの課題です。

どこまで実際に出てくるのかは、今秋から公表される一覧と、各社のページで確かめられます。

今秋から始まる。自分は何を見に行けばいい?

届け出の受け付けと適用が始まるのは、今秋の予定です。始まったら、順番はこの3つで十分です。

最初に、よく使っている画像生成AIのサイトを開いて、学習データについての説明を探します。学習プロセス、学習データの種類、集め方の3つが載っているかを見るだけで、その会社の姿勢がだいたい分かります。

次に、公表される一覧で、そのサービスを出している会社の受け入れ状況を確かめます。全部受け入れたのか、一部を断ったのか、断ったならどんな理由なのか。会社の説明と一覧の記載を並べて読めるのが、この仕組みの面白いところです。

最後に、実際に似ている絵に出会ったときは、学習データの確認を求めるという手が残っています。法的手続きに使わないことなどの条件はつきますが、行き止まりではなくなります。

AIで絵を作るのも、自分の手で描くのも、どちらも楽しいことです。その楽しさを支える説明書きが、今年の秋から各社のサイトに並び始めます。次にイラストを作る前にそのページを開けば、いつものサービスが何を読んで絵を覚えたのかが分かる。使い慣れた1本を、中身まで知ったうえで選び直せる秋になります。

用語ミニ解説

  • プリンシプル・コード: 政府が2026年8月25日に決めた、生成AIの事業者向けの原則。学習データの概要開示、権利者への開示、AI利用者への開示の3つが柱です。
  • コンプライ・オア・エクスプレイン: 決められた原則を実施するか、実施しないならその理由を説明する、という対応の方式。罰則で縛らずに説明を求める形です。
  • 学習データ: AIが文章の書き方や絵の描き方を覚えるために読み込んだ、文章や画像などの材料のことです。
  • 生成AI: 言葉の指示をもとに、文章や画像、音声などを新しく作り出すAIのことです。
  • 知的財産権: 作った人が自分の作品や発明について持つ権利。イラストや漫画、音楽の著作権もここに含まれます。

Me-Moon編集後記 🌙

AIで絵を作るのが楽しいのは、思いついた景色がその場で形になるからです。秋からは、その絵の元になった材料の説明も一緒に読めるようになります。

何を学んだのかを書いている会社を、自分の目で選べる。作る人にとっても描く人にとっても、サービス選びが少し楽しくなりそうですね🌙

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参考リンク

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小宮 滉

監修者

小宮 滉

コインチェック株式会社を経て、現在はGUILD株式会社および一般社団法人Web3人材マネジメント協会の代表理事を務める。

Web3・仮想通貨分野では、「NGG(NinjaGuild_Japan)」というコミュニティの運営や、「IVS Crypto THE DEMODAY」MetaMeトラックでの優勝など、多くの実績を有する。

また、AI・ブロックチェーン開発を強みとしたDXサービスを提供し、企業の成長を支援します。AI・ブロックチェーン技術との統合を通じて、DX体験をシームレスに実現し、ユーザーと企業の双方に新たな価値を創出することを目指して、開発支援やマーケティングを行っております。

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