3行でわかるこの記事
- 何が起きた? 富山県舟橋村と富山のご当地VTuber裟々羅冥がコラボしたデジタル商品「推し湯札」が、2026年9月3日12時に売り出されました。
- 重要なポイント 4,980円(税込)を払うと、村の銭湯「さつきの湯」で使える電子入浴券が1回分ついてきます。
- なぜ注目? その入浴券に有効期限がないので、富山から遠い人も、いつか村を訪れた日に使えるからです。
はじめに
推しのグッズを買うと、たいてい家にモノが増えます。アクリルスタンドも缶バッジも、机の上に置き場所を作って、そこで完結します。飾って、たまに眺めて、それで終わりです。
富山県の小さな村が売り出したものには、置き場所が要りません。届くのはスマホの中身と、銭湯の入浴券が1枚だけ。買った時点で部屋に増えるものはゼロで、代わりに増えるのは「いつか行く場所」のほうです。
その商品の名前は「推し湯札」といいます。富山県舟橋村と、富山県のご当地VTuberである裟々羅冥がコラボしたもので、2026年9月3日の12時に売り出されました。画面の中のキャラクターの姿で配信する人と、村の銭湯の組み合わせです。4,980円で届く中身は何なのか。期限のない入浴券は、買った人に何を残すのか。
ひとことで言うと
推しにお金を払ったら、まだ行っていない行き先が1つ増える買い物です。
4,980円を払うと、何が届くの?
届くものは3つあります。裟々羅冥のオリジナルデジタル湯札、富山県舟橋村の銭湯「さつきの湯」で使える電子入浴券1回分、そして買った人だけが受け取れるデジタルボイスです。値段は税込み4,980円で、販売数に上限はありません。数量限定の争奪戦にはならないので、思い立った日に買えます。
デジタル湯札というのは、NFTと呼ばれるデータです。銭湯の下駄箱にある木の札を思い浮かべると近いのですが、木ではなくデータで、誰が持っているかがブロックチェーンという共有の記録に残ります。だから、これは自分のものだと後からでも示せます。
デジタルの中身は、買ってすぐ手元に来るわけではありません。作るのに購入から1〜2ヶ月かかり、できあがるとTOKKENという販売サイトのチャット機能で送られてきます。予約したグッズが届くのを待つ、あの時間に近い感覚です。
相手の裟々羅冥は、富山県で生まれ育った富山県ご当地VTuberです。冥土の幽霊メイドというキャラクター設定で、富山弁を交えた雑談やゲーム、歌、ショート動画を通じて、富山の魅力や地域の話題を発信しています。富山で育った声が、富山の村の銭湯の券と一緒に届きます。
大人450円の銭湯に、4,980円は高くない?
さつきの湯の入浴料は、13歳以上の大人が450円、6歳から12歳が100円、6歳未満が50円です。4,980円は大人の入浴およそ11回分にあたるので、券1枚と引き換えの値段としては10回分ほど余計に払う計算になります。
その余った分は、どこかへ消えるわけではありません。売上の一部は裟々羅冥本人の活動に還元され、同時に舟橋村の公共施設の応援にもなります。推しにお金を出したつもりが、村の施設を支えるほうにも回っている。湯札を買う手が、2か所に届いています。
正直な注意点も書いておきます。買ったあとのキャンセルと返金はできません。デジタルコンテンツの譲渡や転売も禁止されています。ただし入浴券だけは、まだ使っていない状態に限って人にゆずれます。富山の知り合いに「これ使って」と渡す道は残されています。
買ってから湯に入るまで、何をすればいいの?
手順は3つです。TOKKENで「推し湯札」を買う。舟橋会館「さつきの湯」へ行く。買ったものが並ぶマイページで電子チケットの「使用する」ボタンを押して、受付で画面を見せる。操作らしい操作は、この3つで終わりです。
売り場になっているTOKKENは、地域に眠る文化や自然、施設、コミュニティといった資源を、特別な権利や体験の形にして売るための場所です。運営しているのは、あるやうむという札幌の会社。好きな自治体にお金を出すとお礼の品が届く、ふるさと納税という仕組みがありますが、そのお礼の品をNFTにすることを国内で初めて実現した会社です。地域の新しい財源づくりや観光の誘致に取り組んできた延長線上に、銭湯の1回分が並んでいます。
舟橋村がこういうものを売るのは、初めて?
「推し湯札」の第1弾は、2026年8月26日の12時に売り出されました。組んだのは、富山県在住の個人VTuberである繭玉ザクロと、バーチャル番台を名乗って温泉や銭湯を愛するVTuberの湯楽めぐりの2名です。湯楽めぐりは温泉入浴指導員と温泉ソムリエという、温泉にまつわる資格を2つ持っています。その湯楽めぐりの商品ページには「湯楽めぐり湯札★限定ボイス+さつきの湯入浴券」という商品名と4,980円(税込)、そして「ログインして購入」のボタンが並んでいます。
村が売ってきたものは、湯札だけではありません。2026年4月24日の正午には「一生銭湯に入れる権利」が5,000円(税込)で10口だけ出ました。富山県外に住んでいる人が対象で、月に1回、期限なしでさつきの湯に入れる中身です。10人分しかなかったこの権利は、想定より早く完売しました。ほぼ同じ値段で一生入れたのなら4,980円の1回分は割高に見えますが、あの10口はもう残っていません。いま上限なしで並んでいるのは「推し湯札」のほうです。
村の売り物はまだあります。ばんどり米というお米が3年間届く便が70,000円、10年間なら220,000円。列車の車内メロディを作る体験が250,000円で、村長にプレゼンできる権利が100,000円。発想が毎回自由です。
そんな舟橋村は、日本一面積の小さな村です。広さは3.47平方キロメートルで、ニューヨークのセントラルパーク(3.41平方キロメートル)とほぼ同じ。あの大きな公園と同じくらいの土地に、村が丸ごと1つ入っています。その村が、子育てを助け合うむらづくりと並べて、NFTを使った関係人口づくりに取り組んでいます。住んでいなくても村を気にかける人を、全国に増やす試みです。
期限がないと、何が変わるの?
電子入浴券に有効期限はありません。遠くに住んでいる人は、まず限定ボイスとデジタル湯札を受け取っておいて、いつか舟橋村を訪れた日に「さつきの湯」で券を使えます。
期限つきの券なら、買った瞬間に宿題が1つ増えます。3ヶ月以内に予定を空けて、交通費を計算して、間に合わなければそのまま終わる。期限のない券は宿題になりません。富山に用事ができた日でも、旅行のついででも、数年後の気まぐれでも、そのとき「使用する」を押せばいいだけです。
行き先は、富山県中新川郡舟橋村海老江147番地にある舟橋会館です。朝9時から夜9時まで開いていて、12月1日から3月31日だけ10時30分から夜8時までに変わります。休みは12月29日から1月3日の年末年始だけなので、思い立った日はだいたい営業日にあたります。
推しにお金を払った日は、ただの買い物の日でした。それが、まだ行っていない場所を1つ持っている状態に変わります。行く日を決めるのは、村でも券でもなく自分です。
用語ミニ解説
- VTuber: 画面の中のキャラクターの姿で、動画や生配信をする人たちのことです。
- NFT: データの持ち主をブロックチェーンという共有の記録に残して、誰のものかを示せるようにしたものです。
Me-Moon編集後記 🌙
推し活の買い物は、手元に増えたモノの数で満足度が決まりがちでした。今回増えるのは行っていない場所なので、いちばん嬉しい日が数年後にずれるかもしれません。
期限のない券が、財布ではなくスマホに1枚。予定の持ち方として、なかなか良いですね🌙
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泊まる権利をデジタルで持ち、使わないときは人に回せる仕組みの話です。
応援したぶんが目に見える形で残る、もう1つの事例です。
参考リンク
- 富山県舟橋村×富山県ご当地VTuber「裟々羅冥」コラボ実施決定 — PR TIMES, 2026-09-03
- 富山県舟橋村がご当地VTuber「裟々羅冥」とコラボした「推し湯札」を販売 — PANORA, 2026-09-03
- 富山県舟橋村がVTuber2名とコラボした「推し湯札」を販売 — PANORA, 2026-08-26
- 舟橋会館(さつきの湯) — 舟橋村公式サイト, 2026-09-07
- 湯楽めぐり湯札★限定ボイス+さつきの湯入浴券 — TOKKEN, 2026-09-07
- 富山県舟橋村、「一生銭湯に入れる権利」をNFTで販売 — TRAICY Release, 2026-04-24
- 日本一小さな村が売り出した「一生銭湯に入れる権利」 — TABI LABO, 2026-06-08
- 日本一小さな村・富山県舟橋村ってどんなところ? — TABIZINE, 2024-01-13
