3行でわかるこの記事
- 何が起きた? DeNAが2026年10月15日、大学受験生向けの数学アプリ「SIRUS(シルス)」の本格提供を始めました。
- 重要なポイント 紙に解いた答案をスマホで撮るだけで、AIが30秒以内に途中式まで読んで部分点を付け、次に解く問題まで出してくれます。
- なぜ注目? 記述の答案を見てもらえる機会は住む場所や家計で差が出やすく、その差をスマホ1台で埋めようとしているからです。
はじめに
高2までは部活ばかりで、数学以外はほとんど手をつけていなかった受験生がいます。高3に上がった時点で、英語・国語・理科を1年で全部仕上げなければならない状況でした。その受験生、岡崎明日加さんは、のちに東京大学の理科一類に合格しています。数学の勉強を再開したのは9月ごろでした。
岡崎さんの体験談には「模試10点から、本番47点へ。」という見出しが付いています。点数にすると4倍以上です。この体験談が載っているのは、ある数学アプリの公式サイトです。
そのアプリが、DeNAの「SIRUS(シルス)」です。手書きの答案をAIはどこまで読めるのか、採点のあとに何をすればいいのか。気になるのはこの2つです。
ひとことで言うと
紙に解いた数学の答案をスマホで撮ると、AIが30秒以内に部分点まで採点し、志望校に合わせて次に解く問題まで出してくれるアプリです。今は無料で使えます。
答案を撮ると、30秒で何が返ってくるの?
使い方はシンプルです。まず、志望校やレベルに合わせて出された問題を、ノートや答案用紙に手で解きます。次に、その紙をスマホで撮って送ります。すると30秒以内に、AIが採点した結果が返ってきます。カップ麺にお湯を入れて待つ時間よりずっと短い時間です。
SIRUSがすごいのは、最後の答えが合っているかだけを見るのではないところです。AIは途中式も読み取って、部分点を付けます。部分点とは、答えが最後まで合っていなくても、途中の考え方や式が正しければもらえる点のことです。国公立大学や難関私立大学の数学では、答えに至る道すじまで書かせる記述式の問題がよく出ます。最後の計算でつまずいても、途中まで正しければ点が残ります。
採点結果は「方針」「論証」「計算」の3つの観点で返ってきます。方針は、どう解くかの見通しを立てる力を見ます。論証は、自分の考えを採点する人に正しく伝える力で、計算は、最後まで丁寧に計算をやり切る力です。どこで点を落としたのかが3つに分かれて見えるので、なんとなくできなかったで終わりません。
公式サイトでは、観点を読解・方針・計算・検証の4つに分けています。読解では問題の条件を正しく拾えているかを、計算では途中式のズレを、検証では最後の確認までできたかを見ます。分け方は発表と少し違いますが、どちらも答案のどこでつまずいたのかを細かく見ようとしています。
塾や参考書との違いもここにあります。参考書の解説は、誰が読んでも同じ模範解答です。SIRUSは、自分が書いた答案そのものに返事をくれます。正しい解き方を知るだけでなく、自分の答案のどこがずれていたかがわかります。
AIの判定が外れる心配もあります。部分点や論証の判定を間違えると、実力を高く見積もってしまったり、勉強の方針を誤ったりするおそれがあるという指摘も出ています。採点結果を受け取ったら、自分でも答案を見直すくらいの使い方がちょうどいいのかもしれません。
採点のあとは、毎日何を解けばいいの?
SIRUSが掲げる言葉は「解きっぱなしで、終わらせない。」です。難関大の数学は、解いたあとの見直しで差がつきます。答案に残った考え方をたどり、問題の読み取り、方針、計算のどこで迷ったのかを見つけて、次に解く問題を決めます。SIRUSは、その流れをアプリの中でつなげています。
まず、志望校に合格するために必要な実力と、答案から分析した今の実力を比べます。その差をもとに、何を、どの順番で、いつまでに身につけるべきかをAIが予測します。そこから毎日出てくるのが「あなたのための3問」です。3問は、入試を分析して作った約3000問のオリジナル問題の中から選ばれます。約3000問は、1日3問ずつ解いても全部終わるのに1000日、2年半以上かかる量です。その中から、今日解くと合格の可能性を高められる3問を選んでくれます。
3問では足りない人には「演習プラス」が、苦手な分野をまとめて鍛えたい人には「分野別トレーニング」があります。答案を重ねるほど、自分の得意・苦手・ミスのくせが少しずつ見えてきます。
今の実力は、分野ごとにレーダーチャートで表示されます。レーダーチャートは、クモの巣のような多角形のグラフです。数学の分野ごとに今の実力と合格に必要な目安が並ぶので、どの分野が足りていないかがひと目でわかります。さらに入試本番までの期間から逆算して、いつまでにどの分野をどのレベルまで上げるか、そして今日解くべき問題を示してくれます。毎日の3問が、合格までの道のりとつながるしくみです。
公式サイトの画面例を見ると、使い続けた様子がイメージしやすくなります。解いた問題数は45問で、続けた日数は23日になっています。その下の「次に解く一問」には、確率の標準問題が出ています。1日2問ほどのペースで3週間ちょっと続けると、こういう画面になるわけです。
β版を使った受験生の中には、模試で苦戦した数学の論述力を伸ばしたくて使い始めた人もいます。その人は、本番で数学の点を大きく伸ばせて、やって良かったと話しています。
一方で、ストアのレビューには、問題数がまだ少し少ないという声や、東進のAI演習と似ているという声もあります。本格提供が始まったばかりで、問題はこれから増やしていく予定です。
お金はかかる?どのスマホで使える?
料金は、2026年10月時点で無料です。iPhoneならApp Store、AndroidならGoogle Playから入れられます。ただ、公式サイトのよくある質問では、無料なのはテストユーザーの期間中とされていて、その期間が終わったあとの料金はまだ書かれていません。今のうちなら、自分に合うかどうかを無料で確かめられます。
Android版は、Android 7.0以降のスマホで動きます。Android 7.0は2016年に出たバージョンなので、今使われている多くのAndroidスマホで使えるはずです。2026年10月9日に公開されたバージョン1.0.2では、問題をシェアする機能が加わりました。
本格提供の前から注目もされていました。10月7日には、Android版がストアの教育部門で月間最高16位に入っています。インストール数は1,000件を超えています。
始め方は、1問解いて、答案を撮って送るだけです。今は数学の記述答案が中心で、主に国公立大学や難関私立大学を目指す受験生に向けて作られています。
なぜDeNAが受験生向けのアプリを作ったの?
DeNAはいま、AIを成長の力にして新しい事業を立ち上げていて、SIRUSもその一つです。2025年4月には社内にAIイノベーション事業本部を作り、AIを使ったコンサルティングの会社も立ち上げました。会社としては、喜びを生み出し続ける仕組みである「Delight創造エコシステム」づくりを掲げています。
SIRUSは、社員が出した企画から事業になったアプリです。提供しているのはDeNAと、その子会社のBAKERUです。開発責任者の水谷亮輔さんは、BAKERUで新しい事業を育てるチームに所属しています。
アプリの出発点には、水谷さん自身の受験があります。地方で育った水谷さんの周りには大きな予備校がなく、一人で手探りしながら受験勉強をしていました。いちばんつらかったのは、勉強の難しさよりも、このやり方で本当に合格できるのかが見えない不安でした。現役では合格できず、上京して予備校に通う中で、答案を見て次にやることを示してくれる存在の大きさを知りました。
大学時代には教育NPOで多くの中高生と向き合い、一人ひとりに寄り添う大切さを学ぶ一方で、人が見られる人数には限りがあるもどかしさも感じていました。水谷さんは受験生を「未熟なプロジェクトマネージャー」にたとえます。プロジェクトマネージャーは、仕事の計画を立てて進み具合を管理する役目の人のことです。受験生も志望校というゴールに向けて計画を立て、進み具合を管理していますが、まだそのやり方に慣れていません。水谷さんはSIRUSを、答案からつまずきを読み取り、合格まで毎日付き添うAIのコーチだと説明しています。
背景には、受験の環境の差があります。数学の記述答案は、きちんと評価してもらえる機会が少なく、添削を受けられるかどうかは住む場所や家の経済事情に左右されやすいとDeNAは指摘しています。地域によっては、専門的な指導を受けられる塾や予備校そのものが限られています。このままでいいのかという不安を一人で抱えて勉強している受験生も少なくありません。AIを使えば、一人ひとりに合わせた学びを、今までほどお金をかけずに届けられます。そう考えて作られたのがSIRUSで、発表の副題にも、住む地域や塾に通っているかどうかに関係なく、答案を見てもらえる機会を届けると書かれています。
水谷さんは、学力は本来、住む場所や家庭のハンデを跳ね返せる、誰にとっても平等な武器だったはずだと考えています。最初の試作版を高校生に使ってもらったとき、自分が苦しんだころから10年経っても、この課題はまだ解決されていないと痛感しました。
開発の初期にあたる2025年11月から、受験生100人以上に試作版を使ってもらい、反応を見ながら直してきました。そして一般入試まで残り数カ月となり、記述対策が本格化するこの時期に合わせて、2026年10月15日に本格提供が始まりました。今後は問題を増やすことに加えて、数学以外の教科への展開や、学校や地方の塾で教材として使ってもらうことも考えています。将来は大学受験だけでなく、一人ひとりに合わせた学びを届ける教育サービスに育てることを目指しています。
用語ミニ解説
- SIRUS(シルス): DeNAと子会社のBAKERUが提供する、大学受験生向けの数学記述添削アプリです。手書きの答案を撮るとAIが部分点まで採点します。
- BAKERU: DeNAの子会社で、SIRUSを一緒に提供している会社です。開発責任者の水谷亮輔さんが所属しています。
- β版: 本格提供の前に、使う人の声を集めるために公開する試し版のことです。
Me-Moon編集後記 🌙
数学の答案を誰かに見てもらうには、これまで塾や先生が近くにいる必要がありました。スマホのカメラ1つで、途中式まで30秒で見てもらえるのは、地方で一人で勉強している受験生にとって大きな変化だと思います。
苦手な数学でも、30秒で返事が来るなら、今夜1問だけ解いて撮ってみたくなりますね🌙
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スマホのカメラで撮るだけでAIが中身を読み取ってくれる、別の使い方がわかります。
SIRUSのように、スマホ1台で始められるAIの使い方をまとめて知りたい人に向いています。
参考リンク
- 大学受験生向け数学記述添削AIアプリ「SIRUS」本格提供のお知らせ — DeNA ニュースリリース, 2026-10-15
- 答案を見てもらえる機会を、住む地域や通塾を問わずすべての受験生へ — 株式会社ディー・エヌ・エー(PR TIMES), 2026-10-15
- SIRUS(シルス)公式サイト — SIRUS公式サイト
- SIRUS本格提供開始の記事 — ITmedia NEWS, 2026-10-15
- SIRUS本格提供開始の記事 — AI Watch
- SIRUS本格提供開始の記事 — Dtimes
- SIRUS本格提供開始の記事 — ICT教育ニュース, 2026-10-16
- SIRUS本格提供開始の記事 — NP schools
- シルス-SIRUS(Android版アプリ情報) — Applion
- SIRUSの部分点評価についての記事 — PLUS web3 media
- DeNAのAIコンサルティング会社設立のお知らせ(英語) — DeNA News(英語)
