3行でわかるこの記事
- 何が起きた? 音声AIの会社ElevenLabsが2026年9月28日、感情をこめて話す新しい音声モデル「Eleven v4」と、返事が速い「Eleven v4 Turbo」を公開しました。
- 重要なポイント 文章に[laughs]のような短いタグを書くと、AIの声がそこで笑ったり、雨音などの効果音が入ったりします。
- なぜ注目? ほかの音声AIとの聞き比べで約75%の人に選ばれ、日本語を含む90以上の言語を同じ声のまま話せます。
はじめに
「落ち着いて」という一言は、誰がどんな場面で言うかでまるで違って聞こえます。不安がる患者に医師がそっと声をかけるときと、ゲームの兵士が戦場へ飛び込む前に仲間へ叫ぶときでは、同じ言葉でも声の調子は正反対です。人は自然にこの使い分けをしていますが、文字を読み上げる機械に同じことを頼むのは、これまで簡単ではなかったかもしれません。
ElevenLabsが2026年9月28日に公開した音声モデル「Eleven v4」と、その低遅延版「Eleven v4 Turbo」は、この使い分けを文章への書き込みで頼めるようにしました。台本に[laughs]と書けば、AIの声がそこで笑います。では、タグを使うとどこまで演技を指定できるのでしょうか。そして日本語でも、同じように自然に話せるのでしょうか。
ひとことで言うと
文章に「ここで笑って」「小雨の音を入れて」とメモを書くだけで、AIの声がそのとおりに演じてくれるようになりました。
文章にタグを書くと、AIの声はどこまで演じてくれるの?
Eleven v4は、文章を声にして読み上げる音声AIです。文の中に角かっこで[laughs](笑う)と書き込むと、その場所で笑いながら話します。こうした書き込みはインラインタグと呼ばれ、台本の余白に演技のメモを書くのと同じ感覚で使えます。どう読んでほしいかを、ふだんの言葉で説明して頼むこともできます。
公開されたデモでは、文の頭に[excited, happy](わくわく、うれしそうに)と付けた一文が、夏の新メニューが今週の金曜日に始まり、マンゴースティッキーライスがついに戻ってくると弾んだ声で知らせます。[sleepy drowsy voice](眠そうな声)と[yawning](あくび)を付けた例では、「あと5分。この夢が終わったらすぐ起きるから」と、あくびまじりにつぶやきます。
指定できるのは笑いや眠気だけではありません。[under his breath]と書けば小声でぼそっと話し、[said angrily in French accent]と書けばフランス語なまりで怒った話し方になります。さらに[light rain]で小雨の音、[phone buzzing]で電話がブルブル震える音と、効果音まで同じ文章の中に入れられます。
ゲームの村人キャラクターのお手本もあります。[casual]で気軽に「谷の外にいる角の生えたイノシシを退治してくれないか」と頼み、[annoyed]と[sigh]で「まだ片づいてないのか」とため息をつき、[ecstatic]で無事に戻ってきた相手を大喜びで迎えます。1人のキャラクターが場面ごとに気分を変えるところまで、タグで書き分けられます。
何人もが話す場面では、Eleven v4は場面全体の流れをつかみます。1行ずつ別々に作った声をつなぐのではなく、直前の相手の言葉を受けて返すような会話になります。演技の振れ幅は「Stability(安定性)」という設定で決められ、低くすると毎回表情豊かに変わり、高くすると決まった調子に近いまま話します。
ほかの音声AIと比べて、本当に自然に聞こえるの?
どの会社のAIかを伏せたまま聞き比べるテストで、Eleven v4は約75%の人に選ばれました。4人のうち3人がこちらの声を選んだ計算です。AIの性能を比べる評価サイトArtificial Analysisの音声モデルランキングでも1位になっています。
比べた相手は、グーグルのGeminiの音声モデル2つを含む、ほかの会社の4つのモデルです。同じ台詞をEleven v4と相手の1つで聞かせ、どちらが表情豊かで、どちらが自然かを選んでもらいました。1対1の勝率は相手によって65%から81%で、いちばん手ごわい相手と比べても、3人に2人ほどがEleven v4を選んだことになります。
ひとつ前のモデルEleven v3と比べても、音の質、声の再現の正確さ、感情の込め方、タグの効き方、対応する言語まで、ひととおり良くなっています。
日本語でも、同じ声のまま自然に話せるの?
Eleven v4とTurboは、日本語を含む90以上の言語に対応しています。ある言語で録った1つの声が、ほかの言語もすらすら話せます。しかも声の主らしさは残したまま、発音はその言語を母語とする人のものに変わります。
たとえば韓国語を話す人の声をまねて英語を話させると、韓国語なまりの英語ではなく、自然な英語が出てきます。自分の声のまま、話したことのない言語をネイティブの発音で話せるということです。
低遅延版のTurboでは、とくに大きく良くなった言語として、日本語、ブラジルのポルトガル語、中国の標準語、広東語が挙がっています。日本語で試す人にとっては、うれしい知らせかもしれません。
AIが電話の相手になっても、返事が遅れて気まずくならないの?
会話は、返事までの間が長いとぎこちなくなります。Eleven v4 Turboは、話す内容を組み立てる処理にかかる時間が、何度も測ったときの真ん中の値で約100ミリ秒、つまり0.1秒ほどです。人どうしが話すときの平均的な間よりも短い時間で返せます。声が実際に出始めるまでも約150ミリ秒で、まばたき1回ほどの速さです。
速さに演技が加わると、電話窓口はこう変わります。カスタマーサポートのデモでは、AIが待たせたお礼を言い、「えっと」「うん」と相づちを挟みながら、11日に料金が二重に引き落とされていたことを認め、その場で返金の手続きを始めます。別のデモでは、費用を心配する患者のためにデリケートな処置の予約を受け付け、その場の空気に合った声のトーンで応じます。
ElevenLabsの会話AIの仕組みであるElevenAgentsでは、Turboが聞き取り役のAIや、話す順番を判断するAIと組み合わさって動くため、返事が速く、話の割り込みにも自然に対応できます。通話の途中で相手が別の言語に切り替えたら、AIも同じ声のまま言語を合わせるか、より正確な発音のために声ごと切り替えます。
自分の声で試すのは難しいの?
声をまねる「インスタント・ボイス・クローン」は、別に学習させる手間がいりません。ふつうは1〜2分の短い音声をアップロードすれば、数秒で使える声ができあがります。Eleven v4では、10秒の音声からでも元の声をかなり忠実に写し取れるようになりました。
Eleven v4とTurboは、会話AIのElevenAgents、音声づくりのElevenCreative、開発者向けの窓口の3つから、すでに使えます。無料アカウントを作れば、その日のうちに声の生成を始められます。最初の1文に[laughs]を書き足すだけでも、AIの声の変わり方を自分の耳で確かめられます。
用語ミニ解説
- ブラインドテスト: どの会社が作ったものかを伏せたまま比べるテストです。名前に引っぱられず、音そのものの良さで選んでもらえます。
- Artificial Analysis: いろいろなAIの性能を同じ条件で比べ、ランキングにして公開している評価サイトです。
- ElevenAgents: ElevenLabsが提供する、電話やチャットで人と会話するAIをつくる仕組みです。
Me-Moon編集後記 🌙
台本に[sigh]と1つ書けば、ため息まで声になります。文字と声のあいだが、ぐっと近くなりました。
自分の書いた一文に[laughs]を入れたら、どんな笑い声が返ってくるのか聞いてみたくなりますね🌙
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参考リンク
- Eleven v4: Our Most Emotive Model Yet — ElevenLabs 公式ブログ, 2026-09-28
- Eleven v4 Turbo in ElevenAgents — ElevenLabs 公式ブログ
- Eleven v4 Capabilities — ElevenLabs 公式ドキュメント
