3行でわかるこの記事
- 何が起きた? ソフトバンクの子会社が作った国産の生成AI「Sarashina」を、誰でも無料で試せるベータ版が2026年10月13日に公開されました。
- 重要なポイント Googleアカウントでログインするだけで、申し込みなしにAIとの会話や日本語と英語の翻訳が使えます。
- なぜ注目? 日本の会社が日本語を重点的に学ばせて一から作ったAIを、ふだん使いの画面でさわれる機会だからです。
はじめに
sarashina.aiのトップページを開くと「今すぐ無料で試す」というボタンがあります。押してGoogleアカウントでログインすると、もうチャット画面です。実際に試した人は、ほかの生成AIと同じような感覚で使えて違和感がないと書いています。
その人が最初に入れた質問は「AIモデル『Sarashina』について教えてください。」でした。新しいAIに、まず自己紹介をしてもらったわけです。
このAIは、SB Intuitionsという会社の国産生成AI「Sarashina」です。試せるサービス「Sarashinaサービス」の無償ベータ版が、2026年10月13日に始まりました。本当に申し込みなしで使えるのか、タダで使っていて気をつけることはないのかが気になるところです。
ひとことで言うと
日本の会社が日本語向けに作ったAIが、Googleでログインするだけで無料で使えるようになりました。回数の上限と、入れた文章が学習に使われることだけは知っておくと安心です。
本当にGoogleでログインするだけで始められるの?
要りません。Googleアカウントでログインすれば、事前の申し込みなしで誰でも無料で使えます。新しいサービスだと「順番待ちリストに登録して、招待メールを待つ」という形もよくありますが、Sarashinaはその手間がありません。
初めてログインしたときに、利用規約への同意を求められます。ここで同意すれば準備は終わりです。規約では、18歳未満の人は親など保護者の同意が必要とされています。中学生や高校生がさわるなら、家の人にひとこと言ってからになります。
もうひとつ覚えておきたいのが、1年以上使わないとアカウントが通知なしに消される場合があることです。お試しで一度だけ使って放っておくと、いつのまにか無くなっているかもしれません。
チャット画面では何ができるの?
Web上で、AIとの会話や翻訳を体験できるチャット機能が一般公開されました。チャット画面のアドレスはchat.sarashina.aiです。AIと会話しながら、ウェブを検索してもらったり、文章を作ってもらったりできます。
翻訳は、チャット画面の左メニューで「翻訳」を選ぶだけです。日本語から英語へも、英語から日本語へも、両方向に訳せます。翻訳を受け持つのは「Sarashina3 translate」という翻訳専用のモデルで、日本語と英語を違和感なく訳すことを売りにしています。試した人が「日曜日の営業時間は午前10時から午後4時までです。」を訳してもらうと「Sunday hours are from 10 a.m. to 4 p.m.」と返ってきました。お店の張り紙に使えそうな、短くまとまった英文です。
会話の受け答えは、まだ完璧ではありません。試した人の感想では、質問にまっすぐ答えず、関係の薄い説明が返ってくることがあったそうです。別の人は、名前の由来にちなんで『更級日記』の作者を聞いてみるという試し方をしていました。自分の得意なジャンルで質問して、答えのクセを見てみるのも楽しみ方のひとつかもしれません。
扱えるのは文章だけです。写真を読み取ったり、絵を描いたり、声でやりとりしたりする機能は、公式には案内されていません。
会社や開発者はどう使えるの?
チャットとは別に、会社や開発者が自分のシステムに組み込んで呼び出せる仕組みも公開されています。用途に合うかどうかを、実際に組み込んで試せるわけです。呼び出すための専用の鍵は、チャット画面のメニューから作れます。呼び出せるモデルは6つあり、mini、nano、translate、embedding、rerank、guardという名前がついています。文章を作って会話する役、単純な作業を大量に速くこなす役、文章やよくある質問から答えを探す仕組みに使う役、その検索結果をより正確にする役、入力された文章が安全かどうかを判定する役、そして先ほどの翻訳役です。
速さ重視のモデルについては、試した人の計測があります。282トークンの答えを1.38秒で返しました。トークンはAIが文章を区切って数える単位で、282トークンは短めの説明文くらいの量です。それが2秒もかからずに出てきます。このモデルに問い合わせ文を「営業時間・アクセス・その他」のどれかに分けるよう頼むと、「営業時間」と一言だけ返しました。余計なことを言わずに仕分けだけする、こういう地味な仕事に向いた役です。
ここで使えるのは「Sarashina3」で、2026年6月30日に登場しました。Sarashina3はモデル本体が一般には配られていないので、自分のパソコンに入れて動かすことはできません。使うならこのサービスを通すことになります。
無料で使うとき、何に気をつければいいの?
利用は無料ですが、一定の時間に送れる回数には上限があります。システムに組み込む仕組みのほうでは、会話用と翻訳用、安全チェック用が1分に6回、速さ重視と検索まわりのモデルが1分に60回までです。1分に6回なら、10秒に1回のペースになります。まとめて大量に試すと、そのぶん待ち時間がふくらみます。試した人は、会話用のモデルで100件の質問を試すのに17分ほどかかりました。
しかも、上限に達したときに「あと何秒待てばいい」「残りは何回」といった案内は出ません。止まったら、少し時間を置いてやり直すしかありません。上限や無料枠を避けるためにアカウントを何個も作るのは、規約で禁止されています。
無料がいつまで続くかは決まっていません。無償ベータ版の終わる時期は未定で、有料プランの料金もまだ発表されていません。無料のうちにさわれるのは、今のベータ版の期間だけかもしれません。
いちばん大事なのは、入れた文章の扱いです。チャット画面の下には「モデル改善のため、利用規約に明記されている通り、入出力データを学習に使用します。」と書かれています。規約では、学習に使うのを断れるのは有料プランだけで、無料版では断れません。無料で試すときは、AIに入れた文章は学習に使われる前提で考えることになります。
規約では、名前や住所など個人を特定できる情報を入れることも禁止されています。答えを医療や法律、お金の専門的なアドバイスとして使うことも禁止です。AIの答えが正しいことは保証されていないので、大事な判断は自分で確かめる必要があります。
一方で、ベータ版で集めた使われ方や感想は、今後の製品づくりや機能の追加に生かされます。個人の情報を入れずに試すことが、日本語のAIを育てる手伝いにもなるかもしれません。
ChatGPTなどとは何が違うの?
いちばんの違いは、日本の会社が日本語のデータを重点的に学ばせ、学習の最初の段階から自分たちで作ったモデルだという点です。
作ったSB Intuitionsは、ソフトバンクが100%出資する子会社です。2023年3月27日に設立され、同じ年の8月1日に今の社名になりました。代表は井尻善久さんです。日本語に特化した国産の大規模言語モデル(たくさんの文章を学んで言葉をあやつるAI)の研究開発と、生成AIサービスの開発や提供を仕事にしていて、日本語に強い「Sarashina」シリーズがその中心です。目標は、国産のモデルで日本語の性能1位になることです。
日本語向けの工夫として、文章をトークンに区切る仕組みを日本語に合わせて設計しています。同じ文章を、アメリカのモデルの半分のトークン数で表せるそうです。同じ文を半分の数のかたまりで扱えるので、AIにとっては日本語を読む手間がそれだけ少なくなるかもしれません。
もうひとつの強みは、国内最大規模の計算機の設備と、国内のデータセンターでデータを厳しく管理していることです。データを国内で管理しているのは、会社で使うときの安心材料になるかもしれません。
名前の由来も日本らしいものです。「Sarashina」は、竹芝という地名が歴史上初めて出てくる『更級日記』から取られています。平安時代の古典が、最新のAIの名前になっているわけです。
シリーズは2024年6月のSarashina1とSarashina2から始まり、少しずつ新しいモデルが出て、今回の3代目にたどり着きました。
ソフトバンクは2026年4月16日に、Sarashinaを使った生成AIサービスを2026年6月から自社のクラウドで順番に提供すると発表していました。そのクラウド「Cloud PF Type A」はソフトバンク自身が管理と運用をしていて、データを自分の国の中で守れる作りになっています。東日本のデータセンターでは2026年4月に始まり、西日本では2026年10月に始まる予定です。ソフトバンクはSarashinaを、日本語の処理が得意で、日本の文化や慣習にくわしい国産AIだと説明しています。
今回の公開の背景には、手早く実用的なAIの仕組みを作りたいという企業の声の高まりがあります。その日本語AIを、まずは誰でもさわれる形で開いたのが今回のベータ版です。
用語ミニ解説
- Sarashina: ソフトバンクの子会社SB Intuitionsが作っている、日本語に強い国産の生成AIのシリーズ名です。今回試せるのは3代目のSarashina3です。
- SB Intuitions: ソフトバンクが100%出資する、日本語AIの研究開発会社です。2023年に設立されました。
- トークン: AIが文章を読むときに区切る小さなかたまりのことです。同じ文章を少ないトークンで表せるほど、AIは効率よく扱えます。
Me-Moon編集後記 🌙
ボタンを押してGoogleでログインするだけ、という気軽さに驚きました。申し込みも招待待ちもないので、思い立ったその日にさわれます。
最初の一問は、Sarashinaに自己紹介をしてもらうか、『更級日記』の作者を聞いてみるか、迷うところですね🌙
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参考リンク
- Sarashinaサービス無償ベータ版の提供開始(プレスリリース) — SB Intuitions, 2026-10-13
- 会社概要 — SB Intuitions
- Sarashinaを活用した生成AIサービスの提供について(プレスリリース) — ソフトバンク, 2026-04-16
- Sarashinaサービス無償β版の公開を伝える記事 — ITmedia NEWS, 2026-10-13
- 日本発のAI「Sarashina」のベータ版を使ってみる — note(濱口貴光)
- Sarashinaサービスの試用記録 — Qiita(skrtk98)
- Sarashina無料ベータ版の解説 — AI Revolution
- Sarashina無料版の学習利用についての解説 — quasa
- Sarashinaシリーズの解説 — issoh
